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すべてを知り、すべてを終えた者


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■引用原文(日本語訳)

前世の生涯を知り、また天上と地獄とを見、
生存を滅ぼしつくすに至って、直観智を完成した聖者、
完成すべきことをすべて完成した人――
かれを、われは〈バラモン〉と呼ぶ。

(『ダンマパダ』第423偈|第二六章「バラモン」)


■逐語訳と語義

  • Yassa pure ca nāparaṃ ca majjhe:「過去・未来・現在すべてにおいて」
  • Yāvatā jātiyo:「生の流転(輪廻の生起)を」
  • Saṃvattanti:「繰り返し起こる」
  • So jānāti:「彼はそれを知っている(智慧で観る)」
  • Vibhavaṃ patto:「生存の終わり=輪廻の停止=解脱に達した者」
  • Asaṃhīraṃ:「もはや束縛されない(制御不能ではない)心」
  • Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:「そのような人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ」

■用語解説

  • 前世を知る(pubbenivāsānussati-ñāṇa):過去世を観通する智慧。
  • 天上と地獄を知る(dibba-cakkhu):天眼智。死と再生の因果法則を見抜く眼。
  • 生存を滅ぼす(āsavakkhaya-ñāṇa):煩悩の漏れ(āsava)を完全に断ち、生死輪廻を終える智慧。
  • 完成すべきことをすべて完成した人(kataṃ karaṇīyaṃ):「なすべきことをなし終えた者」という解脱者への称賛句。

■全体の現代語訳(まとめ)

過去に何者であったかを知り、
生まれ変わりの仕組みと未来を見通し、
天界・地獄といった存在の在り処を理解し、
煩悩を断ち、輪廻の車輪から抜け出た人――

彼は、
すべてのなすべきことを終え、
何ひとつ残すもののない、完成者である。

そのような者を、仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。


■解釈と現代的意義

この偈が示す〈バラモン〉は、仏教的修行のすべてを達成した聖者です。
それは単なる知識ではなく、生死のメカニズムそのものを直観し、乗り越えた智慧の完成を意味します。

現代人の私たちにとって、これは単なる宗教的理想にとどまりません。
「何のために生きるのか」「人生の意味はどこにあるのか」「これで本当に良かったのか」といった根本的な問いに、明快に答えを出し、心の底から満たされた人――それがここで言う〈バラモン〉です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
長期視点に基づく決断目の前の損得ではなく、人生全体・社会全体を見通した上での判断と行動ができる。
本質を見抜く力表面的な成功や失敗に一喜一憂せず、物事の本質(因果構造)を見抜いて対応できる。
自己完結する使命感他者評価や報酬を超えて、「これが私の果たすべき役割だ」と納得して行動できる人。
精神的成熟の完成形何かを達成したという感覚ではなく、「なすべきことをなし終えた」という内的完了感と静けさを持つ人物。

■心得まとめ

「なすべきをなし終え、何も残さない静けさ」

未来も、
過去も、
この瞬間も――
すべてを見通し、
すべてを手放し、
すべてを終えた者。

迷いはもうない。
欲望も、恐れも、悔いもない。

ただ静かに、
完成された一つの生を全うした人。

それが、
仏陀の語る〈バラモン〉――
「自己を知り、世界を知り、すべてを越えた悟りの人」
なのです。

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