目次
📜引用原文(日本語訳)
一六*
風が吹いても岩山が動揺しないように、修行僧は、愛執が滅びてなくなるから、岩山のようにゆるがない。
― 『ダンマパダ』 第二章 第十六偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 風が吹いても岩山が動揺しないように:あらゆる外界の刺激にも揺らがない象徴としての岩山。
- 修行僧は:修行を積み、心を浄めた者は、
- 愛執が滅びてなくなるから:愛着(愛情への執着)すらも手放しており、
- 岩山のようにゆるがない:心は完全に自由で、動揺することがない。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
愛執(あいしゅう) | 「愛着」と訳される。対象に対する好意・愛情が過度になると、それが苦しみの原因となると仏教は説く。 |
岩山 | 強さと静けさの象徴。動かずして語る存在。 |
滅びてなくなる | 一時的な抑圧ではなく、根本的に心から消え去った状態。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
どんな風が吹いても揺れない岩山のように、
愛するものにしがみつく心を超えた修行者は、
たとえ愛する人やものとの別れがあっても、それにとらわれて心を乱されることがない。
その心は、澄み切った空のように広く、静かで、揺るぎない。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「愛そのものではなく、愛への執着を手放すこと」の大切さを説いています。
仏教では、「愛すること」自体が悪ではなく、「所有しようとする執着」が苦しみを生むと考えます。
家族・恋人・仕事・理想――人は多くの「愛するもの」に心を縛られます。
しかしその愛が「手放せないもの」になるとき、それは自由を奪い、苦しみの原因となります。
真に成熟した愛とは、「とらわれず、望まず、ただそこにあることを喜ぶ」こと。
そのような境地に達したとき、人の心は初めて岩山のように揺るがぬものとなります。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
人間関係の健全な距離感 | 部下や同僚に対して愛情を持ちつつも、依存や期待で縛らない姿勢が、信頼と成熟を生む。 |
執着なきマネジメント | あるアイデアや成果に過度に固執せず、必要なら手放す勇気が、結果的に組織全体を守る。 |
評価や立場への自由 | 「称賛されたい」「ポジションを維持したい」という欲を超えると、ぶれない判断ができる。 |
チームへの愛と手放しのバランス | リーダーとして「育て、信じ、あとは任せる」態度が、部下の成長を促進する。 |
✅心得まとめ
「愛しながら執着せず、手放してもなお温かく――それが不動の心」
愛することは人間の本能。だが、愛への執着は苦しみを招く。
手放すことを恐れず、愛を与えても、それに縛られない――その時、心はようやく自由になる。
それが、**風の時代にも動じない「岩山の心」**である。
この一六偈によって、仏教的な心の揺らぎの原因(情欲・憎しみ・迷妄・慢心・貪欲・愛執)がすべて網羅され、
真に揺るがぬ者=修行僧の完成像が明示されました。
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