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■引用原文(日本語訳)
この世の禍福いずれにも執著することなく、
憂いなく、汚れなく、清らかな人――
かれを、われは〈バラモン〉と呼ぶ。
(『ダンマパダ』第412偈|第二六章「バラモン」)
■逐語訳
- Yo na lippati loke:この世の(善悪・損得・名利など)に染まらず
- Anupalitto:執着せず、しみつかず(=汚れがつかない)
- Loke adinnaṃ:世の中で与えられないものを取らず
- Asokaṃ:悲しまず・憂いなく
- Vimalam attano:自己が清らかである(心が濁っていない)
- Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:その人こそ、私は〈バラモン〉と呼ぶ
■用語解説
- 禍福(loka):名声・富・快楽・成功・不運・損失など、この世的な価値や出来事
- 執著(lippati / palitto):「染まる」「しみつく」ように、心が外的条件に影響されること
- 憂い(asoka):悲しみや落胆、不安
- 汚れ(vimala):煩悩・怒り・妬み・欲などの心の濁り
- 清らか(vimalam attano):自分の心が濁りなく、常に静かで純粋である状態
■全体の現代語訳(まとめ)
この世の喜びにも悲しみにも
心を染めることなく、
憂いもなく、心に一切の汚れがなく、
清らかに生きている人――
その人を、仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。
■解釈と現代的意義
この偈は、**「世の移ろいに心を振り回されず、常に静かで透明な心を保て」**という智慧を教えています。
人生において、喜びと悲しみ、勝利と敗北、得るものと失うもの――それらは避けられない。
だが、それに染まらず、心を曇らせずにいられる人こそが、真に強く、美しい存在なのです。
この心の在り方は、単なる無感動ではありません。
深く理解し、受け入れ、なお動じない成熟した心のことです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
冷静さと安定感のある判断 | 成功しても舞い上がらず、失敗しても沈まない姿勢が、信頼される判断力を生む。 |
逆境への強さ(レジリエンス) | 外部の評価や環境に左右されない内的安定が、逆境でも継続的な行動を可能にする。 |
感情に流されないリーダーシップ | 褒められても怒られても平常心を保ち、状況に応じた冷静な対応ができる人は、組織の中核となる。 |
透明で清潔なビジネス倫理 | 目先の利益や感情でブレず、「心が汚れない」選択を一貫して行う姿勢が、信頼を築く。 |
■心得まとめ
「染まらず、濁らず、ただ清く在る」
人はどうしても、
得たものに喜び、失ったものに悲しみ、
他人の評価に浮かれ、失敗に沈む。
だが、そうした浮き沈みから解放され、
心を染めず、心を濁さず、
ただ清らかに在ることができたとき――
そこに真の自由が生まれる。
それこそが、仏陀が称える〈バラモン〉、
つまり成熟した人格者の姿なのです。
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