目次
📜 引用原文(『ダンマパダ』第42偈)
害する心がなくて、生けるものどもを愍(あわ)れみ、
生きとし生ける者どもに対して慈しみの心があれば、
かれは何人からも怨まれない。
※同様の内容が42A、42Bとして繰り返し強調される。
🪶 逐語訳(意訳)
- 害そうという心を持たず、
- すべての生き物を哀れみ、慈しみの心をもって接する者は、
- 誰からも怨まれることがない。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
害する心(himsā) | 相手に傷を与える意図や行動。身体的・言語的・心理的な攻撃を含む。 |
愍れみ(anukampā) | 他者の苦しみに心を寄せ、その痛みに同苦すること。慈悲の発露。 |
慈しみ(mettā) | 相手の幸福を願う無条件の愛情・善意。仏教四無量心の一つ。 |
怨まれない(na upanandati) | 憎しみ・報復の対象とならないこと。調和の中に生きる状態。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
他者を傷つけようとする心を持たず、
すべての命あるものに対して、哀れみと慈しみをもって接する人は、
誰からも怨まれたり、敵意を向けられることがない。
🔍 解釈と現代的意義
この偈は、仏教における**「無害(アヒンサー)」と「慈悲(メッター)」の融合を語っています。
ただ「傷つけない」のではなく、そこに思いやりの心が伴うことが、真の安心と尊敬を得る鍵**であると説かれています。
怒り・支配欲・自己正当化による「害する心」が多い現代社会において、
この偈は「非攻撃」と「積極的な善意」の両立という重要な倫理観を提示します。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
非対立型リーダーシップ | 部下や顧客との間で、相手を攻撃したり抑えたりするのではなく、信頼と共感によって導く。 |
無害なコミュニケーション | 批判や指摘も、相手を害さず、目的は相手の成長や関係の前進にあると伝わる言葉を選ぶ。 |
職場の安全文化の創出 | チーム全体が「傷つけない」「尊重しあう」姿勢を持つと、心理的安全性が高まり、生産性も向上する。 |
ステークホルダーとの関係構築 | 利害や交渉がある中でも、相手に害意を与えず誠実な姿勢で接すれば、信頼と協力が築かれる。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「他を傷つけず、心から慈しむ者は、敵をつくらぬ。」
「平和とは、内なる害意を棄てたその瞬間に始まる。」
この偈は、平和的存在であるとは単に「争わない」ことではなく、
**積極的に「他の幸福を願う存在であること」**だと教えてくれます。
仏教が目指す「安穏(あんのん)」の状態は、無害と慈悲の実践の中にある。
これは、現代のビジネスリーダーや組織人が目指すべき、
信頼に根ざした影響力の源泉とも言えるでしょう。
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