目次
■原文(日本語訳)
第2章 第15節
クリシュナは言った。
「それらの接触に苦しめられない人、苦楽を平等(同一)のものと見る賢者は、不死となることができる。」
■逐語訳
- それらの接触(ヤン・ヒ・ナ・ヴィヤタヤンティエテ):感覚と外界の接触(寒暑・苦楽)を指す。
- 苦しめられない人(プルシャム・プルシャルシャバ):その接触によって心を乱されない人物。
- 苦楽を同一に見る(サマ・ドゥッカ・スカム):苦しみと喜びを平等に受け止める心の姿勢。
- 賢者(スティラム):不動の智慧を持った人。冷静で分別ある人。
- 不死となる(アムリタットヴァム・アシュヌテ):永遠の実在(魂)を悟り、解脱に至ること。
■用語解説
- サマ(平等):好き嫌いや損得を超えた、心の静かな受け止め方。
- ドゥッカ/スカ(苦・楽):痛みや悲しみ、喜びや快楽といった感覚・感情。
- アムリタットヴァ(不死性):魂の不滅、死を超えた境地。真の自由・解脱(モークシャ)の象徴。
- プルシャルシャバ(人の中の最高者):アルジュナへの敬意ある呼びかけ。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは言う。「寒さや暑さ、喜びや苦しみといった外界との接触に心を乱されない者は、苦楽を等しく見る智慧を持つ。そのような人物こそ、不死――すなわち魂の自由・解脱――に至ることができるのだ」と。
■解釈と現代的意義
この節は、「苦しみ」と「喜び」という両極の感情に振り回されないことが、魂の成熟と真の自由の条件であることを示しています。
人は苦を避け、楽を求めがちですが、どちらも一時的なものであり、そこに執着する限り心は不安定です。
現代においても、ストレスと報酬の波に揺れながら働く私たちにとって、「どんな状況にも揺れない心」こそが最大の資産となります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
メンタルタフネス | 目の前の評価や失敗に動揺せず、自分の信念と価値観に基づいて行動できることが、持続力の鍵となる。 |
成果と平常心の両立 | 楽しいときに慢心せず、苦しいときに自己否定しないことで、安定したパフォーマンスを発揮できる。 |
リーダーとしての軸 | チームの混乱時にも落ち着いて判断・指示を出せる人物は、信頼と尊敬を集める。 |
変化への耐性と柔軟性 | 業績や人事、外的要因に過度に反応せず、長期的視点を持つことで経営判断がぶれなくなる。 |
■心得まとめ
「喜びにも悲しみにも揺れぬ心が、不死の智慧をもたらす」
人生は、快と不快の波が交互に押し寄せる航海。
その中で一喜一憂するのではなく、変わらぬ目標と冷静な姿勢を持ち続ける者こそ、真のリーダーであり、精神的自由に至る道を歩む者である。
次の第16節では、「実在(サット)と非実在(アサット)」についての哲学的な核心が語られます。
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