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励みは人を憂いから解き放ち、智の高みに導く


■ 引用原文(日本語訳)

賢明なる人がつとめはげみによって放逸をたち切るときには、
知慧の高閣に登り、憂いを去って、憂いある人びとを見下す。
山の上にいる人が地上の人々を見下すように。

――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第4節


■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)

  1. 賢い人が努力によって放逸を断つとき、
     思慮ある者が精進(努力)をもって怠惰や気ままな生活を断ち切るとき、
  2. その人は知恵の高み(高閣)に上がり、
     物事の真理を見通す智慧の境地に至り、
  3. 憂いを離れ、憂いに沈む人々を遠くから見る。
     悩みや不安から解き放たれ、それに囚われている人々を静かに見下ろすようになる。
  4. ちょうど山頂に立つ者が、谷底の人々を見下ろすように。
     高所から見渡すように、心の余裕と俯瞰の視点が得られるようになる。

■ 用語解説

用語解説
つとめはげみ(アッパマーダ)注意深く、たゆまぬ努力を続けること。仏教における最高の美徳の一つ。
放逸(パーマーダ)無関心・怠惰・節制の欠如。修行を妨げる最大の障害。
知慧の高閣(パンニャーパッサダ)悟りに近づく高度な認識力・洞察力の象徴。
憂い(ソーカ)心の苦しみ・悩み。煩悩から生じる苦。
山の上にいる人(パッサティ・グリシュティ)高い境地に到達した比喩。広い視野と心の余裕を意味する。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

賢者は精進によって怠惰を断ち、精神的な高み――真理を見通す知恵の世界へと至る。そこでは憂いが消え、苦しみにとらわれている人々の姿を、まるで山の上から見下ろすように、静かに見守ることができる。その境地は、苦悩の海から抜け出した者にのみ開かれる視野である。


■ 解釈と現代的意義

この節は「高い視点と心の自由は、日々の努力によって得られる」ということを教えています。
怠惰や雑念に流される生き方では、常に心が苦しみに囚われ、視野が狭くなる。
しかし、意識的に励み続ける者は、やがてその束縛を超え、物事を広く見渡せるようになる。
これは精神的成熟と自由の象徴でもあります。


■ ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
自己マネジメントルーティンの積み重ねによって迷いや怠惰を断ち、自分を制御できるようになる。
メンタルの安定誠実な努力は、心の混乱や不安からの脱出を可能にし、冷静な判断をもたらす。
リーダーシップ組織の外側・上空から俯瞰するような視野を持つには、日々の行動と内省の積み重ねが必要。
課題への姿勢困難に囚われず、広い視点で解決策を見いだせる人は、周囲からも信頼される。

■ 心得まとめ

「怠惰を断ち、智慧に登れば、心は憂いを超える」

努力とは、単なる手段ではなく、精神を高所へと導く梯子である。
日々の精進によって心は磨かれ、悩みに囚われずに全体を見渡す力が育つ。
それは、感情に流される者では決して得られぬ、静かで確かな「心の高み」である。

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