目次
■原文(日本語訳)
第2章 第30節
クリシュナは言った。
「あらゆる者の身体にあるこの主体(個我)は、常に殺されることがない。
それ故、あなたは万物について嘆くべきではない。」
■逐語訳
- この主体(個我)(アヤム・デーヒ):身体の中に宿る魂(アートマン)。
- あらゆる者の身体にある(サルヴァスヤ・バールタ):すべての生命ある存在のうちに存在する。
- 常に殺されることがない(ナ・ハンヤテ):決して滅ぼされることがない、不死の存在である。
- あなたは嘆くべきではない(タスマート・ショチトゥム・ナ・アルハシ):だからこそ、死や消失に悲しみと執着を抱く必要はない。
■用語解説
- アートマン(個我・主体):変化する肉体や心ではなく、変わらぬ霊的実体。
- デーヒ(身体に宿るもの):肉体そのものではなく、それに内在する本質的な存在。
- ナ・ハンヤテ(殺されることがない):不滅・不死。物理的な破壊や死の影響を受けない。
- ショチ(嘆く):失ったことに対する悲しみ。執着から生まれる感情。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは言います。
「どんな身体にも宿っている魂は、いかなる手段によっても滅ぼされることがない。
だからこそ、誰かが死んだり、何かが失われたりしたときも、
その本質的存在(魂)は失われていないのだと知り、嘆く必要はないのだ」と。
ここでは、死を超えた視点=“魂の不滅性”による心の平安が説かれています。
■解釈と現代的意義
この節は、魂(真我)は身体とは別の不滅の存在であるという核心的な思想の締めくくりです。
私たちは「目に見えるものが失われる=存在も消える」と考えがちですが、
本質的な存在は、見えなくなっても失われるわけではないという見方が提示されています。
この理解は、死や別離だけでなく、変化や損失への恐れを和らげる心の支えとなります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
本質へのフォーカス | 形ある組織やプロジェクトが終わっても、その理念・信念は生き続ける。それを見失わないことが重要。 |
変化に動じない精神 | 状況や人が変わっても、「本質的な価値」に目を向けることで冷静さと判断力を保てる。 |
人材マネジメント | 部下の異動や退職があっても、「人格・才能」はどこかで必ず生かされると信じる視座が、健全な送り出しにつながる。 |
ブランドや文化の継承 | 目に見える形式ではなく、その背後にある精神や信念が“殺されない本質”であると理解し、継続的に育てていく。 |
■心得まとめ
「魂は死なず、精神は続く。だから、嘆きではなく信を持て」
失われたように見えても、真に大切なものは消えていない。
変化する身体、消える形の奥にある不変の本質に気づけば、私たちは嘆かずに進める。
この認識こそが、変化の時代を生きるうえでの強さと安らぎとなるのです。
この節をもって、クリシュナの「魂の不滅性」に関する哲学的論証の一区切りがつきます。
次の節では、義務(ダルマ)に基づく行動という現実的・社会的な視点へと話が移っていきます。
コメント