目次
■引用原文(日本語訳)
六 教えを聞いて、諸のことがらを識別する。
教えを聞いて、悪を行なわない。
教えを聞いて、ためにならぬことを避ける。
教えを聞いて、束縛の覆いの解きほごされたところ(=不死の処)に至る。
――『ダンマパダ』 第二二章 第六節
■逐語訳
- 教えを聞いて識別する:物事の善悪・正誤・重要性を見分けられるようになる。
- 教えを聞いて悪をしない:判断力がつき、道を踏み外さなくなる。
- 教えを聞いて害を避ける:無益なこと・危険なこと・道を逸れたことを避けられる。
- 教えを聞いて不死の処に至る:輪廻の束縛から解放され、涅槃(ニルヴァーナ)に至る。
■用語解説
- 教え(ダルマ):真理・仏陀の説いた法。智慧の源。
- 識別(ヴィニッチャヤ):単なる理解ではなく、判断・選択する力。
- 束縛(サンヨージャナ):煩悩や執着によって心が縛られ、輪廻から抜け出せない状態。
- 不死の処(アマタ・パダ):仏教で「死を超えた境地」=涅槃(ニルヴァーナ)を象徴する語。
■全体の現代語訳(まとめ)
人は教えを聞くことで、まず正しい理解力を持つようになる。
次にその理解によって悪を遠ざけ、さらに無意味な行動を慎み、
最終的には、あらゆる執着や束縛から解き放たれ、悟りの境地――「不死の処」に到達できる。
この節は、「聞法の力」を四段階で示している。
■解釈と現代的意義
この詩句は、「聞くこと」の価値を段階的に説いたものであり、
学び → 判断力 → 行動 → 解放 という、学問と実践のプロセスを明確に示しています。
現代では情報があふれていますが、「何を聞き、どう受け取るか」が人生の質を決定します。
本当に有益な教えは、人の思考を変え、習慣を変え、人生の行き先まで変える力を持ちます。
「聞くこと」が運命の分岐点になる――それが仏陀の教えです。
■ビジネスにおける解釈と適用
段階 | 実務への応用 |
---|---|
① 諸のことがらを識別する | 市場や顧客の情報・社内の声を正しく「聞く」ことで、現状を正確に把握できる。 |
② 悪を行なわない | 誤った判断・不正・倫理違反を避けるためには、原理原則に耳を傾ける必要がある。 |
③ ためにならぬことを避ける | 会議・施策・無意味な業務に流されず、本質に基づいた選択が可能になる。 |
④ 束縛を超える | 結果に縛られず、恐れや執着を離れた「自律した働き方」や「心の自由」に至る。 |
■心得まとめ
「聞くことは、見えぬ鎖を断ち切る智慧の剣である」
人は知識で満足してしまいがちだが、本当に価値ある教えは、行動を変え、人生を変える。
それは、私たちを日々縛る「惰性」「慣習」「他人の目」「執着」から、静かに自由にしてくれる。
だからこそ、耳を傾けるべき教えを選び、それを深く聞くこと――これが、心の進化の鍵なのです。
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