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■引用原文(日本語訳)
修行者の行ないは、知能の鈍い人間の為し難く忍び難いことである。愚鈍なる者の気落ちするような苦悩は多いのである。
―『ダンマパダ』第11章 第6偈
■逐語訳
- 修行者の行ないは(samaṇassa dhammo):修道者の実践(教えに従う行い)は、
- 知能の鈍い人間の為し難く(duppaññassa duvācassa):知恵が乏しく、制御力のない者にとっては実行しがたい。
- 忍び難いことである(durabhiṇhaṁ):精神的・肉体的に耐えるのが難しい。
- 愚鈍なる者の気落ちするような苦悩は多いのである(bahukaṁ dukkhaṁ āpajjati):愚かな者は、多くの苦しみに直面し、心が折れる。
■用語解説
- 修行者の行ない(samaṇassa dhamma):出家者または真理の探究者の行動規範。戒・定・慧の三学の実践。
- 知能の鈍い(duppañña):仏教における「智慧なき者」。ただ学識が乏しいのではなく、正しく観る力(正見)に欠ける人。
- 苦悩(dukkha):仏教における基本概念。精神的・物理的苦痛、迷い、心の葛藤などすべてを含む。
■全体の現代語訳(まとめ)
仏陀は、「修行という道は、心が未熟で知恵の乏しい者には、極めて困難なものである」と説いている。精神の鍛錬・執着の手放し・自制心を求められるこの道において、愚かさと怠惰を持つ者は多くの苦しみに打ちのめされ、途中で挫折する危険性が高いという警告である。
■解釈と現代的意義
この偈は、「精神の修練とは、決して楽な道ではない」ことを明確にしています。努力や自律を続けることの困難さ、そして真理に至る道に対する心構えの厳しさを伝えています。
現代においても、内面的な成長や自己変革を目指す人々にとっては、「続けること」や「耐えること」の中に本質があると、力強く示してくれる言葉です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 現代ビジネスでの適用例 |
---|---|
継続力の重要性 | 成果は一朝一夕では得られず、精神的な粘り強さと反復が必要。 |
自己鍛錬の困難さ | 知識のインプットだけでなく、態度・姿勢・規律ある行動を習慣化するのは非常に難しい。 |
若手育成と心構え | 若手社員にとって、最初の壁は“精神的な耐性”。これを超える指導が不可欠。 |
組織改革の道筋 | 組織文化の改善やビジョンの具現化は、「気力ある者」でなければ継続できない。改革には智慧と根気が要る。 |
■心得まとめ
「志す道は、心弱き者を許さない。真の歩みは、耐える力に宿る」
仏陀の教えは、「精神の成熟なくして、真の成果はない」と語ります。
修行も、仕事も、人生の成長も、外見ではなく“内なる力”――すなわち智慧・耐性・自律が問われます。苦しみの多さに心折れる者ではなく、その中で学び、歩み続ける者こそが、本当に道を歩む者なのです。
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