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剣の先にあるのは、憎しみではなく、愛する者たちの顔


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■引用原文(日本語訳)

「師、父親、息子、祖父、叔父、義父、孫、義兄弟、その他の縁者たちが。」
―『バガヴァッド・ギーター』第1章 第34節


■逐語訳(一文ずつ)

  • 「そこには、私の師がいる。
  • 父親がいる。
  • 息子たちがいる。
  • 祖父がいる。
  • 叔父が、義理の父が、
  • 孫たちが、義理の兄弟たちが、
  • そしてその他、私にとって大切な縁者たちが、皆立っている。」

■用語解説

  • 師(グル):ドローナなど、アルジュナに武術・知識・道徳を教えた存在。単なる指導者ではなく、精神的父ともいえる存在。
  • 縁者(バンダヴァー):血縁、姻戚、友人など、深い関係にある者たち。インドの伝統では家族の広がりが非常に重視される。
  • 義兄弟(サーラー):ドラウパディーの他の夫たちなど、親密な人間関係を意味する。
  • 列挙の意図:アルジュナは単に「人々」と言うのではなく、関係性をひとつひとつ挙げることで、情の深さと葛藤の大きさを表している。

■全体の現代語訳(まとめ)

アルジュナは、今まさに対峙している戦場に、師や家族、血縁や姻戚など、かけがえのない人々の顔を一人一人思い浮かべている。
そのすべてが「倒すべき敵」として目の前に並んでいる現実を前に、アルジュナの心は押し潰されそうになっている。


■解釈と現代的意義

この節は、戦いが抽象的な「正義対悪」ではなく、具体的な「人間と人間の関係性の断絶」であることを示します。
アルジュナにとって、敵とは赤の他人ではない。かつて共に笑い、支え合い、愛し合ってきた人々なのです。

これは現代にも通じます。企業内の対立、家族の葛藤、仲間との衝突。
多くの場合、相手は「他者」ではなく、「かつて共に歩んだ者たち」です。
だからこそ、感情の傷も深く、判断も難しい――その苦悩の本質がここに描かれています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
人間関係の重み対立や競争の相手が、かつての仲間や恩人であることもある。その重みを無視して「正論」だけで行動するのは危険。
感情の葛藤実務的には正しくても、心理的・倫理的な抵抗感があるときは、決断の前に一度立ち止まるべき。
関係の尊重プロジェクト解体・再編成・異動などで関係が壊れそうなとき、当事者の関係性を丁寧に扱うことが、後の信頼に繋がる。
リーダーの共感力組織を動かす者は、単なる効率ではなく、「誰と誰が関係しているか」にも十分に目を配る必要がある。

■心得まとめ

「人は関係の中に生きている。誰と向き合っているのかを忘れるな」
アルジュナは、戦場に並ぶ一人ひとりの顔を思い出し、その関係の重さに苦悩する。
ビジネスにおいても、対立や判断の背後には“人と人との物語”がある。合理だけで割り切らず、その「関係の価値」にこそ目を向ける者が、真に人望あるリーダーである。


次の第35節では、アルジュナが「三界を支配できるとしても、彼らを殺すことはできない」と述べ、明確に“戦う意志”を放棄し始める姿が描かれます。

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