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■引用原文(日本語訳)
彼らは我執、暴力、尊大さ、欲望、怒りを拠り所とする。妬み深い彼らは、自己と他者の身体に宿るこの私を憎んでいる。
(『バガヴァッド・ギーター』第16章 第18節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 彼ら(阿修羅的な者たち)は、
- 我執(アハンカーラ)、
- 暴力(バラ)、
- 尊大さ(ダルパ)、
- 欲望(カーマ)、
- **怒り(クローダ)**を拠り所としている。
- 嫉妬と妬みに満ちた彼らは、
- **自己と他者の身体に宿るこの“私”(バガヴァーン、すなわち神)**をも憎んでいる。
■用語解説
- 我執(アハンカーラ):自我への固執、「私がすべてだ」という錯覚。
- 暴力(バラ):力をふるうことによる支配欲。言葉・権威・身体的強制も含む。
- 尊大さ(ダルパ):他人を見下す誇り。傲慢さの外的表現。
- 妬み深さ(アスーヤー):他者の成功や存在そのものへの憎悪。
- この“私”(マーム):神(クリシュナ)、真理、あるいはすべての存在に内在する神性のこと。
■全体の現代語訳(まとめ)
阿修羅的な性質の者は、自我・暴力・傲慢・欲望・怒りといった否定的な要素を人生の基盤としている。そして彼らは、他者だけでなく自分自身の中にも宿っている神聖な存在(バガヴァーン)すら否定し、憎しみを向ける。
■解釈と現代的意義
この節は、「自己中心的で破壊的な人格が、いかにして真理を憎むようになるか」を明らかにしている。
我執・怒り・傲慢が強くなると、人はやがて自分の内なる良心や神性すら煩わしく感じ、それを否定し破壊しようとするようになる。これは、内面の堕落が極まった状態であり、救いから遠ざかる大きな危険である。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 教訓と警告 |
---|---|
自己中心のリーダー | 「自分が正しい」「力がすべて」と思い込むと、仲間や組織の倫理性すら邪魔と感じるようになる。 |
誠実な声への敵意 | 内省や良識を促す部下・仲間を疎ましく感じるようになれば、その組織は腐敗の入り口に立っている。 |
成功の危うい代償 | 力と成果に偏った成功は、謙虚さを失わせ、「誰も自分に意見できない」状態を生む。 |
倫理的自己否定 | 他者の尊厳だけでなく、自分の中の正義感や良心さえ否定するようになれば、破滅は近い。 |
■心得まとめ
「自分の中の神性を憎むとき、人は完全に道を失う」
欲望・怒り・傲慢は、ついには真理すら否定させるようになる。
ギーターは語る――破壊の最終段階とは、他者だけでなく、自分の中にある“神”すら否定すること。
だからこそ、力あるときこそ謙虚に、怒りの中でも真理を尊ぶ姿勢を保つべきである。
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