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妄執の夜は長く、輪廻は終わらぬ


目次

📜 引用原文(日本語訳)

男は愛執を妻として、長夜に臥す。
ひそむ妄執のゆえにくり返し流転輪して、くり返し母胎に入る。
このような状態、それとは異なった状態というふうに、
輪のうちに行きつ戻りつする。
――『ダンマパダ』 第三章「愛執」より(一二)


🔍 逐語訳・語句解説

  • 愛執を妻として:愛欲・執着を伴侶のように常に寄り添わせ、離れることがない様子。
  • 長夜に臥す:無明(無知)と妄執の中で長い夜を過ごすこと。悟りを知らぬ人生の比喩。
  • ひそむ妄執:表面化しないが、心の奥深くにある執着や誤解された価値観。無意識の執着。
  • 流転輪(るてんりん):サンサーラ=生死の繰り返し。輪廻転生。
  • 母胎に入る:再び生を受ける、すなわち輪廻から抜け出せずに生まれ変わる。
  • このような状態・それとは異なった状態:富・貧、幸・不幸、男・女など、前世と異なるあらゆる存在形態。
  • 行きつ戻りつする:輪の中を回り、どこにも出口がなく、同じ苦しみを繰り返す。

💬 全体現代語訳(まとめ)

人は、愛欲や執着を心の伴侶のように抱えながら、長い「無明の夜」の中で眠りつづけている。
その心の奥底に潜む妄執が、終わりなき輪廻を招き、何度も何度も生まれては死ぬことを繰り返す。
その姿は、あるときはこのような人生に、あるときはまったく異なる人生にと、
輪の中をただ回り続ける者にほかならない。


🧭 解釈と現代的意義

この節が私たちに問いかけてくるのは、**「あなたは何にしがみつき、何に気づかず、同じ過ちを繰り返していないか」**という内観のテーマです。

現代の輪廻は、生まれ変わりだけに限らず、精神的パターンの反復とも読めます。
同じような人間関係で傷つき、同じような欲望に支配され、同じ失敗を繰り返しては「なぜ?」と問う…。それは、内なる妄執に気づかない限り、何度でも繰り返される現代的サンサーラなのです。


💼 ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
無意識の思考習慣の影響過去の成功や思い込みに囚われ、新たな視点を拒むことで、同じミスや停滞を繰り返してしまう。
チーム内の“見えない前提”言語化されていない価値観や暗黙の了解(妄執)が、組織の進化を妨げている場合がある。
戦略のパターン化環境が変化しているのに、過去と同じ方針に固執することで、新しい可能性を閉ざすことになる。
“何度も同じことで悩む”状態の脱出問題を解決しようとする前に、「なぜ毎回このパターンが起きるのか?」という根本原因への内省が必要。

🪷 心得まとめ:感興のことば

「妄執を見ずして進めば、
巡る輪のなかを、何度でも歩むことになる」

ブッダは語ります。**「苦しみの繰り返しは、外から来るのではない。
あなたが見ようとしない“内なる執着”から始まっている」**と。

愛執に寄り添い、妄執に気づかぬ者は、やがて自己同一の苦を何度でもなぞることになります。
真に自由を得るには、その「見えない伴侶(愛執)」を見つめ、手放す覚悟が必要です。


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