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真実を見るために、歩みを止める勇気を持て


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■引用原文(日本語訳)

「アルジュナにこう言われて、
クリシュナは両軍の間に最高の戦車を止め、」
―『バガヴァッド・ギーター』第1章 第24節


■逐語訳(一文ずつ)

  • 「アルジュナの要請を受けて、
  • クリシュナは両軍の間に、
  • 至高の戦車(ラタ)を静かに止めた。」

■用語解説

  • クリシュナ:アルジュナの御者であり、導き手。神(ヴィシュヌ)としての役割も担い、真理の語り手でもある。
  • 両軍の間:物理的には敵味方の境界線だが、精神的には「選択と葛藤の狭間」「義と情の分岐点」を意味する象徴的空間。
  • 最高の戦車:アルジュナの戦車は、白馬に引かれ、猿の旗印(ハヌマーン)を掲げる神聖な乗り物。「魂の乗り物」「自己の象徴」とも解釈される。
  • 止める:一時停止という物理的行為でありながら、「静観」「観照」「内観」への移行を意味する行為。

■全体の現代語訳(まとめ)

アルジュナの要望に応じ、クリシュナは戦車を両軍の中間地点に止めた。それは、敵味方の区別が最も曖昧になり、「この戦いの本質は何か」を見つめ直すにふさわしい、心理的にも象徴的にも最も重要な位置であった。


■解釈と現代的意義

この節は、アルジュナの問いに対するクリシュナの沈黙の応答でもあります。クリシュナは言葉で答えるのではなく、「立ち止まる」という行為で導いているのです。そして、その停止は「ただ見る」ためのもの――戦いに向かう前に、自分がこれから矢を放とうとしている相手の顔を見て、自らの感情・関係・義務を見つめ直すための時間です。

現代でも、何かを決める前に「一度立ち止まる」という選択は、非常に大きな意味を持ちます。それは、行動を遅らせるためではなく、正しい行動を選ぶための「最も能動的な静止」なのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
重大な局面での停止判断プロジェクトの進行中であっても、「本当にこれでいいのか」と立ち止まり、確認する習慣を持つべき。
静かなリーダーシップ指示を出すのではなく、まず「止まる」ことによってチームに熟考と観察の時間を与えるクリシュナ型のリーダーシップ。
判断前の観察力目の前の人や状況を見ずに判断するのではなく、「一歩下がって見る」ことで、本質が見えてくる。
精神的な間(ま)の重視高速で進めるだけでなく、プロセスに「間」を持つことで、判断の質・行動の意義が変わる。

■心得まとめ

「一歩止まる者だけが、正しく進める」
前に進むことだけが勇気ではない。立ち止まり、自分の立場と相手の顔を見て、何を選ぶべきかを見極める力こそが、真のリーダーの在り方である。クリシュナのように、言葉なくして「止まる」ことで、相手に内省の機会を与える知恵を持て。


次節(第25節)では、クリシュナが戦車を止めたその場所に、アルジュナにとって最も重要な人物たち――師や親族たちが並んでいることが明かされ、アルジュナの心の動揺が本格的に始まります。

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