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清廉・責任・調和――すべてを調和した聖人、孔子こそ「集大成」

孟子は、伯夷(はくい)・伊尹(いいん)・柳下恵(りゅうかけい)という三人の聖人をそれぞれの美徳の代表として位置づけ、
それらをすべて兼ね備えた人物こそが孔子であると語る。
孔子は、時に応じて進退・交際・仕官の是非を判断し、一つの徳に偏らず、すべての徳を正しく調和させた人物である。
そのため、孟子は孔子を「集大成(しゅうたいせい)」の聖人
と讃えた。
この章は、儒教思想における「理想的な人格完成」のモデルを孔子に見出す、象徴的な一節である。


原文と読み下し

孟子(もうし)曰(いわ)く
伯夷(はくい)は、聖(せい)の清(きよ)なる者なり。
伊尹(いいん)は、聖の任(にん)なる者なり。
柳下恵(りゅうかけい)は、聖の和(わ)なる者なり。
孔子(こうし)は、聖の時(じ)なる者なり。

孔子を之(これ)集(あつ)めて大成(たいせい)すと謂(い)う。


解釈と要点

  • 伯夷は「清廉」――悪を見ず、邪を避け、純粋に生きることでその徳を体現した。
  • 伊尹は「責任感」――自らを「先覚者」として民を導く責任を全うした。
  • 柳下恵は「調和性」――どんな人とも親しみ、環境に流されず徳を保った。
  • 孔子は「時に応じる者」――そのときどきの適切さ(よろしき)に従い、偏らず道を歩む柔軟かつ節義ある人物である。
  • 孔子は、**清・任・和・時の四徳を兼ね備え、まさに「人としての完成形=集大成」**であると、孟子は断言する。

注釈

  • 聖(せい):ここでは、道徳的に最も高い理想の人格者を意味する。
  • 清(きよ)なる者:心と行動が潔白で、邪を遠ざける者。
  • 任(にん)なる者:責任を自覚し、民に対して使命を持って行動する者。
  • 和(わ)なる者:誰とでも和やかに接し、他者を否定せずに徳を保つ者。
  • 時(じ)なる者:時宜に応じて適切な判断・行動をとる者。状況判断に優れ、偏らない生き方。
  • 集大成(しゅうたいせい):多くのものを取りまとめ、完成させたもの。現在も使われる語の語源。

パーマリンク(英語スラッグ)

the-complete-sage
→「すべての徳を備えた聖人」としての孔子を表すスラッグです。

その他の案:

  • sage-of-all-virtues(あらゆる徳の聖人)
  • the-balanced-saint(調和の聖人)
  • no-extremes-only-right-timing(極端に偏らず、ただ時に応じる)

この章は、孟子の聖人観を体系的にまとめるものであり、儒教倫理における理想の人間像を集約した定義的章句です。
清廉な孤高(伯夷)、使命感に満ちた献身(伊尹)、柔和にして節操ある交際(柳下恵)――
それらを時に応じて実践し、どれにも偏らず「中庸」を体現した孔子は、
まさに人間としての「完成形=集大成」であり、儒者の永遠の手本とされました。

目次

原文

孟子曰、伯夷之清者也、伊尹之任者也、柳下惠之和者也、孔子之時者也、孔子之謂集大成。


書き下し文

孟子(もうし)曰(いわ)く、
伯夷(はくい)は聖の清(きよ)き者なり。
伊尹(いいん)は聖の任(にん)なる者なり。
柳下恵(りゅうかけい)は聖の和(わ)なる者なり。
孔子(こうし)は聖の時(とき)なる者なり。
孔子をして「集大成(しゅうたいせい)」と謂(い)うなり。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 孟子は言った。
  • 「伯夷は、聖人の中でも清廉さを体現した人物である。
  • 伊尹は、聖人の中でも大きな責任を担い行動した人物である。
  • 柳下恵は、聖人の中でも人と和する徳を持った人物である。
  • 孔子は、聖人の中でも時をわきまえ、時代に応じた対応ができる人物である。
  • それゆえに、孔子こそがあらゆる徳を集めた“集大成”の人物と称されるのである。」

用語解説

  • 清(きよ)き者=伯夷:極端なまでの高潔・潔癖。世俗を避け、道を貫いた人物。
  • 任(にん)なる者=伊尹:天下を担う重責を引き受け、民を導いた責任感と実行力の象徴。
  • 和(わ)なる者=柳下恵:柔和で温厚、人々と和やかに接する徳の人。
  • 時(とき)なる者=孔子:時宜にかなう行動をとり、過去の道を現代に活かす柔軟性と知恵を持つ。
  • 集大成(しゅうたいせい):すべての美徳を統合し、高い完成度を持った人物。ここでは孔子を讃える最大級の表現。

全体の現代語訳(まとめ)

孟子はこう言った:

「伯夷は、聖人の中でも特に清廉潔白な人物である。
伊尹は、重い責任を担い、民のために尽くした人物である。
柳下恵は、温和な人格で人々と良く和した人物である。
そして孔子は、時代に応じて最も適切な行動を取れる人物である。
ゆえに孔子こそが、これらすべての美徳を集めた“聖人の集大成”なのだ。」


解釈と現代的意義

この章句は、孟子が過去の賢者たちの徳を分類し、最終的にそれらすべてを兼ね備えた人物として孔子を「総合的理想人格」と位置づけたものです。

  • 伯夷のような徹底した清廉さ。
  • 伊尹のように民のために責任を担う実行力。
  • 柳下恵のような人との調和を重んじる包容力。
  • そして、孔子のように時代や状況に応じて最適に行動する知恵。

これらはどれも単独で素晴らしい徳ですが、「一人の中にすべてが備わっている」ことの希少さと偉大さを孟子は強調しています。


ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

  • 「清」=高潔な判断基準を持ち、私利私欲に流されない姿勢(伯夷)
     → 不正や忖度に屈しない正義感は、信頼される経営の基盤。
  • 「任」=使命感と責任を持ち、困難を引き受けて組織を導く(伊尹)
     → プロジェクトや経営判断における“決断する勇気”が組織を動かす。
  • 「和」=人間関係を円滑にし、異なる価値観を受け入れる包容力(柳下恵)
     → チームビルディングやリーダーの信頼醸成に不可欠。
  • 「時」=変化に対応し、最も適切な振る舞いを選べる柔軟性(孔子)
     → 不確実性の時代における真のリーダーシップ。
  • 「集大成」=すべての力をバランスよく備えた“完成された人材”
     → 専門性だけでなく、人格や対人力、判断力を含むトータルバランスが真の経営者・管理職の資質。

ビジネス用の心得タイトル

「清・任・和・時──“徳の四象限”を統べる、完成された人物をめざせ」


この章句は、専門性や知識だけではなく、人格・責任感・人間性・適応力といった総合力を持ったリーダーこそが真に価値ある存在であることを説いています。

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