目次
📜引用原文(日本語訳)
第四七偈
生存に対する妄執を断ち切り、
実体についての固執を断ち切った修行僧にとっては、
生れをくり返す輪が滅びている。
今や迷いの生存を再び繰り返すことはない。
― 『ダンマパダ』 第二章 第四七偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 生存に対する妄執を断ち切り:生きることへの執着・「ありたい」「続きたい」という欲を根本から断ち切り、
- 実体についての固執を断ち切った修行僧にとっては:「我がある」「これが自分だ」といった幻想(我執)を断ち切った修行者にとっては、
- 生れをくり返す輪が滅びている:輪廻の因が断たれ、サンサーラ(苦の連鎖)は消滅し、
- 今や迷いの生存を再び繰り返すことはない:無明(無知)によって生きることの苦しみを再体験することは、もはや決してない。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
妄執(もうしゅう) | 自分が存在し続けたいという根源的な欲望や恐れ。 |
実体への固執(我執) | 「自己」という永続的実体があるという誤解。 |
輪廻の輪(サンサーラ) | 生と死を苦しみのうちに繰り返すサイクル。 |
迷いの生存(有) | 欲望・無明・執着に基づいた存在の状態。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
生き続けたいという本能的な執着と、
「私」という誤った自己認識を断ち切った修行僧は、
もはや生まれ変わりの輪の中にとどまることはなく、
これから先、迷いの中で生きることも、苦しむこともない。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、悟りとは「もう迷いの生を繰り返さない」という、
確定的な解放の境地であることを示しています。
現代における「生存の迷い」とは、
- 終わらぬ焦り
- 期待通りにいかない苛立ち
- 他者からの評価に振り回される日々
といった日常に根差した「輪廻的苦しみ」です。
それらはすべて、「執着」と「幻想」によって繰り返されている。
つまり、この偈はこう言っているのです:
苦しみを終わらせたければ、執着を断て。
迷いを終わらせたければ、真理を見よ。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実践への応用例 |
---|---|
ループする不安思考からの脱却 | 「売上がまた下がったらどうしよう」など、未来への過剰な執着を見極め、手放す訓練。 |
アイデンティティの柔軟化 | 「自分はこの役職でなければならない」「こう評価されるべきだ」という実体への固執を解く。 |
持続する心の疲弊からの回復 | 評価・数字・成果に縛られて心が疲れている場合、執着の構造に気づき、手放す実践が必要。 |
意思決定の自由度向上 | 執着が薄まれば、より中庸でバランスの取れた判断が可能になる。判断力は、脱執着に比例する。 |
✅心得まとめ
「もう、迷わない。
もう、苦しまない。
なぜなら、手放したからだ。」
悟りとは、ひとつの「終わり」ではない。
それは「繰り返しからの離脱」であり、
「心の自由の始まり」である。
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