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■引用原文(仮訳)
骨で都市の城壁がつくられ、
それに肉と血とが塗ってあり、
愛と憎しみとおごり高ぶりとごまかしとが
つめこまれている。
※この句は仏典『ダンマパダ』(第150偈など)にも似た主題があり、身体を「骨と肉と欲の塊」として捉える無常観・虚妄観に根ざします。
■逐語訳(意訳)
人の肉体は、まるで城壁のような仮の構造物。
その骨は石垣のように積まれ、
肉と血がそれを塗り固めている。
その内側には、愛情や憎悪、驕りや欺瞞といった
さまざまな感情や欲望が詰め込まれており、
それを「我がもの」と思い込む心が、苦を生むのである。
■用語解説
- 骨=城壁の骨格:身体の構造を支える象徴。人間の物理的制限を暗示。
- 肉と血の塗装:一見美しく見える身体の表面だが、実は儚い・壊れやすいという警句。
- 愛・憎しみ・おごり・ごまかし:仏教やギーターにおいて「煩悩」「グナ(性質)」に該当。精神を乱す根源。
- 都市の城壁=身体(肉体の砦):本質ではないが、「自己」と誤認されやすい仮の存在。ギーター第13章では「身体=クシェートラ(場)」として定義される。
■全体の現代語訳(まとめ)
人間の肉体は、あたかも都市の外壁のような構造物である。
その外見は、骨で形をつくり、肉と血で覆われているが、
その内には、愛情や憎しみ、驕りや欺きといった感情が入り混じっている。
その砦を「自分だ」と思い込み、そこに執着することで、
人は苦の迷宮から抜け出せなくなる。
しかし、肉体も感情も「自分」ではなく、仮の場にすぎない。
■解釈と現代的意義
この章句は、「自己とは何か」という根源的な問いに向き合わせてくれます。
仏教もギーターも共通して、肉体や感情は“自分”ではなく、
それを“自分だと思い込む”ことで苦が生まれると説いています。
ギーター第2章では、**「身体は変化し滅びるが、アートマン(真我)は永遠である」**と述べられ、
第13章では、「身体(クシェートラ)と、それを認識する者(クシェートラジュニャ=知者)を分けて見よ」と説かれます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
自己理解・EQ | 感情(愛憎や驕り)に囚われず、自己観察の習慣を持つことが成熟を生む。 |
マネジメント | 他人の言動の背後にある「心の城壁」の構造を理解することが、真の共感と対話力につながる。 |
ブランドと中身 | 見た目や肩書きの「塗装」ではなく、内面の透明さが信頼と成果を左右する。 |
サステナブルな志向 | 一時的な欲望(愛執・虚栄)ではなく、長期的価値に基づいた行動こそ、豊かな果報を生む。 |
■心得まとめ
「塗られた城壁に宿るものを、我とは思うな」
人間の肉体も、感情も、実は「借り物」である。
骨と肉に塗られた壁の中にある、愛・憎しみ・驕り・欺き――
それに心を奪われるとき、人は城壁の中に閉じ込められる。
真の自由とは、「仮の自己」を超えて見つめ直すことに始まる。
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