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快楽の始まりは甘くとも、終わりには心を蝕む


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■引用原文(日本語訳)

「感官とその対象の結合から生じ、最初は甘露のようで結末は毒のような幸福、それは激質的な幸福と伝えられる。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第38節)


■逐語訳

感官(インドリヤ)とその対象(感覚的なもの・欲望対象)との結びつきによって生まれる幸福――
それは最初、甘露(アムリタ)のように甘く魅力的だが、
その結末は、毒(ヴィシャ)のように心を蝕むものである。
これが、ラジャス(激質)に由来する幸福であると説かれている。


■用語解説

  • 感官と対象の結合(インドリヤ・アルタ・サンヨーガ):五感が外界の対象と接触すること。快楽・快感の源泉となる。
  • 甘露(アムリタ):最初の心地よさ・満足感・喜びの比喩。
  • 毒(ヴィシャ):結果としてもたらされる苦悩・不調和・後悔などの象徴。
  • 激質(ラジャス):欲望・動機づけ・興奮・結果志向に支配された性質。
  • 幸福(スカ):一時的であれ永続的であれ、心の状態としての喜び・快さ。

■全体の現代語訳(まとめ)

感覚的な喜び――たとえば、美味しい食事、心地よい娯楽、賞賛、成功――
これらは、最初は非常に魅力的で「幸福」のように感じられるが、
それに執着しすぎると、やがて疲弊・依存・空虚感・後悔といった「毒」をもたらす。
このような幸福は、ラジャス的(激質)な幸福とされ、持続的ではなく心を不安定にする。


■解釈と現代的意義

この節は、現代の快楽主義・消費主義社会に対する鋭い警鐘とも言えます。
「気持ちよさ」や「面白さ」は決して悪ではありませんが、
それを幸福の中心に据えてしまうと、かえって不幸を生むという逆説的な真理が語られています。

「目先の快を求めるほどに、心は渇いていく」
― ギーターは、真の幸福と一時的快楽の違いを見極めよ、と教えているのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点実務での適用例
報酬と依存昇進・給料・評価にのみ喜びを見出すと、結果に振り回され、やがて空虚さを感じる。
快適さの罠成長には不快ゾーンが不可避だが、快適さや現状に甘んじると長期的に衰退する。
マーケティングと消費者心理消費者に「快楽」を提供するだけでなく、持続的価値や満足を届ける設計が必要。
燃え尽き症候群結果・刺激を追い求めて働きすぎると、慢性的疲労・無気力(=毒)に至るリスクが高まる。

■心得まとめ

「快楽に心を預ければ、甘さの裏に毒が潜む」
短期的な快さや魅力を「幸福」と取り違えた時、
それはやがて心の軸を見失わせ、不安と依存の沼へと導く。
ギーターは言う――真の幸福は、誘惑の先にではなく、意志と智慧の先にある。


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