目次
📖原文(日本語訳)
「その聖者は完全な自在を得、一切のものにまさり、すべての恐怖から解脱し、愛執を捨て、汚れ無く、望むこと無く、生きとし生ける者どもを観じて、世のためを念うている。」
— 『ダンマパダ』第21章「如来」第17節
🔍逐語訳・用語解説
語句 | 解説 |
---|---|
聖者 | ここでは如来、つまり悟りを得た完全者(仏陀)を指す。 |
完全な自在を得 | 何者にも束縛されず、内面において完全に自由であること。精神的な究極の自由。 |
一切のものにまさり | 煩悩や恐怖を乗り越えた者として、精神的次元で他に並ぶもののない存在。 |
すべての恐怖から解脱し | 死・喪失・非難・苦痛といったあらゆる恐れを超越している状態。 |
愛執を捨て | 自我への執着、対人関係への依存、欲望への固着などを断ち切ったこと。 |
汚れ無く | 煩悩・無明・怒りなどによる心の汚染が完全に除かれている状態。 |
望むこと無く | 何かを得よう、なろう、満たそうとする欲求を持たず、今この瞬間に満ちていること。 |
観じて | 観察し、慈しみを持って見つめること(サンパッスィ=静観・観照)。 |
世のためを念うている | 自己の解脱にとどまらず、衆生すべての幸福と解放を願って生きている。 |
💡全体の現代語訳(まとめ)
完全な自由を得た聖者は、
あらゆるものを超え、恐れからも完全に解き放たれている。
愛着や執着を捨て、心は汚れず、何も望まず、
すべての生命を静かに見つめ、
この世界の人々のために心を注いでいる。
🧠解釈と現代的意義
この章句は、仏陀(如来)という存在の完成された精神的在り方と、その根底にある**「慈悲」**の精神を端的に表しています。
悟りとは単に“自分のための自由”ではなく、
「望まず・執着せず・恐れず」に、なお他者のためを思うという、利他的完成であるということが明示されています。
現代においても、自我を超えて、他者や社会のために心を向ける姿勢――
それはリーダー、教育者、医療者、起業家など、あらゆる立場の人にとって理想的な精神の境地といえるでしょう。
💼ビジネスにおける解釈と応用
視点 | 応用例 |
---|---|
恐れのない意思決定 | 評価や失敗の恐怖から解放されることで、より的確で勇気ある判断ができる。 |
執着のないリーダーシップ | 地位や結果へのこだわりを捨て、使命感と全体視点に基づいて導く力が増す。 |
本質的な影響力 | 自分の利益ではなく、他者の幸福を願う姿勢が、信頼と長期的な支持を生む。 |
持続可能な働き方 | 何かを「得る」ための行動から、「与える」ことに喜びを見出すことで、燃え尽きず、内側から満たされる。 |
🧾心得まとめ
「求めず、恐れず、そして与える」
真に偉大な者とは、
何も望まず、何にも怯えず、
そのうえで、他者の幸福を心に抱く者である。
それは静かで、揺るがぬ強さ。
そして、すべてのいのちを見つめ、
自分を超えて世界を想う心――そこに如来の慈悲がある。
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