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終わりこそが、すべてを物語る


一、原文の引用と現代語訳(逐語)

原文

死際のよき者は曲者なり。例し多し。日頃、日を利きたる者の死場にて取乱すは、真の勇士にてなき事、知られたりと。

現代語訳(逐語)

死にぎわの良い者は、実にただ者ではない(=本物の人物である)。
日常で立派なことを言っていたような人でも、死の間際に取り乱すことが多い。
それによって、実は真の勇士ではなかったことが明らかになるのだ。


二、用語解説

用語解説
死際(しにぎわ)死の直前、臨終の瞬間。比喩的には「人生の終わり」や「最後の局面」。
曲者(くせもの)本来はクセ者=得体の知れない者だが、ここでは「只者ではない」「一目置かれる人物」の意味。
日を利きたる者日常的に立派なことを言い、評判を得ている人。口先の人物を指す。
真の勇士覚悟と胆力を持った本物の武士。死ぬときに本性が表れる。

三、全体の現代語訳(まとめ)

最期のふるまいが立派な者は、見かけによらず「本物の人物」である。
一方、日頃どれだけ立派なことを言っていた人でも、死を前に取り乱せば、それまでの威厳は崩れ、内面の弱さが露呈してしまう。
人の価値は「最後」にこそ試される。


四、解釈と現代的意義

なぜ「死に際」が重要なのか?

常朝の思想では、「死」は日常の延長線上にある究極の試練です。
死にぎわ=極限の状態におけるふるまいこそが、その人の本質をあぶり出す。

そしてこの考え方は、死に限らず、「あらゆる終わり」――
プロジェクトの終了、退職、別れ、クレーム対応のラスト――などにも応用できます。

表面の言動ではなく、「終わりの品格」に人は感動する

普段の話しぶりや振る舞いが立派でも、
いざ終わりのときに取り乱したり、責任を放棄したりすれば、その人への信頼は一気に崩れます。
反対に、静かに、毅然と終わりを迎える人には、人間としての重みが宿る。


五、ビジネスにおける解釈と適用(個別解説)

項目解釈・適用例
プロジェクトの終わり方成功・失敗を問わず、終わり方が美しければ次に繋がる。感謝・総括・後始末が大切。
リーダーの交代バトンを渡す際の誠実さ・配慮が、その人の評価を決める。
離職・転職辞め方こそ人格の真価。恨み言を言わず、周囲に敬意を払い、道を開けて去ること。
危機的状況の対応問題が起きた時、逃げずに向き合い、自ら責任を引き受ける姿勢が「真の勇士」。
会議の結論・クロージングどう締めくくるかで、議論全体の印象と信頼感が決まる。

六、補足:「勇士」とは何か

この章句で語られる「勇士」とは、死ぬことが怖くない人ではなく、
死に臨んでなお、他人への配慮や美学を貫ける人です。

つまり、「終わりのふるまい」に美しさ・覚悟・一貫性がある人。
その静かな凛々しさが、後に残る者の心を打ち、尊敬へと変わるのです。


目次

七、まとめ:この章句が伝える心得

「始まりより、終わりが人の価値を決める。」
日頃どれだけ賢く見えても、終わり方で本性が明らかになる。
整然と、静かに、見苦しくなく終える――それができる者こそ、真の勇士である。

だからこそ、
日々の言動に慢心せず、
“いつ何が起きても”取り乱さぬ覚悟を持っていたい。
それが、武士道に学ぶ現代人の姿勢であり、
リーダー・社会人・人間としての「器」を決定づける鍵です。


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