目次
■原文(出典:『ダンマパダ』第十七章 第三偈)
若い時に、財を獲ることなく、
(あるいは出家して)清らかな行ないをまもらないならば、
魚がかしかいなくなった池にいる老いた白鷺のように、
(悲しく)思いに耽る。
■逐語訳
- 若い時に:力があり、活動できる人生の初期段階において、
- 財を獲ることなく:生活や将来に備える努力を怠り、
- 清らかな行ないを守らないならば:宗教的・倫理的修養を怠って生きるなら、
- 魚がいなくなった池にいる老いた白鷺のように:餌がなくなり、力も衰えた白鷺のように、
- 思いに耽る:後悔と虚しさに沈むことになる。
■用語解説
- 若い時:体力・気力・学ぶ意欲に満ちた「備える時期」
- 財を得る:経済的安定や生活基盤を築くこと、あるいは知識・人間関係などの内的資産を含む
- 清らかな行い:倫理にかなった誠実な生き方、精神的成長を促す実践(仏教では戒・定・慧)
- 白鷺:本来は美しく静かな鳥だが、ここでは「無力な老い」を象徴
- 魚がいない池:可能性の枯渇した世界、成果も希望もない状態
■全体の現代語訳(まとめ)
若い頃に働いて備えもせず、また、心の清らかさを育てる努力も怠った者は、
老いてから頼るものもなく、内省だけが残る。
それは、もはや魚のいない池に立ち尽くす白鷺のような、静かながらも深い寂しさを抱えた晩年である。
■解釈と現代的意義
この偈は、「青春は準備の時期」であり、「老年はその結果の時代」であることを教えています。
日々を「なんとなく」過ごすのではなく、目的意識を持ち、誠実に積み重ねることで、
未来は実りあるものになります。特に、精神的な備え(人格・信頼・知恵)は、
年を重ねるほどその価値を増していきます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
キャリア形成 | 若いうちのスキル習得や人間関係の構築を怠ると、年を経てから行き詰まることになる。 |
倫理観と信用 | 技術や結果だけでなく、誠実さを大切にしてきた人は、年を重ねても頼られる存在になる。 |
長期的視点の投資 | 将来を見据えた学びや備え(貯蓄、健康、人脈)は、晩年の安心と自由を保障する。 |
リーダーとしての成熟 | 若き日の失敗や怠惰を経て気づいた者は、後進に対して「備えることの大切さ」を伝えられる存在になる。 |
■心得まとめ
「若き日に積まずして、老いて何を得んや」
力のある時に、学び・備え・磨くことを怠れば、
時を経てから得るものは少なく、思いに沈むばかりとなる。
老いた白鷺のように佇むことのないよう、
今この瞬間に心を尽くすべきである――
それが、未来の自分に対する誠実さなのです。
コメント