中小企業の繁栄と持続可能な成長を実現するためには、賢明な戦略と明確な目標が不可欠です。その成功の秘訣は、賃金に焦点を当て、賃金を基にした長期計画を策定することにあります。
T社のような中小企業は、賃金水準と将来の賃金予測に基づいて、目標設定と戦略の策定を行っています。賃金は企業にとって最も確実なコスト要因であり、計画段階で確実性の高い数字です。賃金の急騰や変動を考慮に入れ、それに対応するための計画を立てることは、経営の成功に不可欠です。
中小企業は賃金だけでなく、他の内部費用や外部の経済状況も考慮しなければなりません。しかし、賃金を中心に据え、それを基盤として経営計画を練ることで、企業は将来に向けて的確な方向を示し、持続的な成長を実現できるでしょう。
賃金を根拠にすることは、中小企業にとって賢明なアプローチであり、長期的なビジョンの確立につながります。抽象的な概念や抽象論にとどまらず、具体的な数字をもとに経営計画を策定することで、企業は変動する環境にも適応し、成功への道を切り拓くことができます。今後、中小企業経営者は賃金に焦点を当て、戦略的な計画を立てることで、持続可能な成長を実現するための重要な一歩を踏み出すべきです。
中小企業は「賃金」から目標をきめよ
T社は、従業員五〇〇人、創立以来二〇年。
その間、常に月商額と資本金の一致を目ざし、その中でずっと二割配当を続けてきたという、中小企業としては超優良会社である。
T社には、すでに昭和五二年の「目標貸借対照表」なるものができている。大企業といえども、一〇年先の姿を明確に画いているところは、あまり多くないと思う。
その意味からすると、まさに「おそるべき会社」である。
T社の長期計画も短期計画も、すべてその「目標貸借対照表」に基づいている。その長期目標は何を根拠にしているかを、筆者はトップに質問した。
その答えは、……「目標の根拠は賃金です。昭和五〇年には、わが国の賃金水準が、現在のEEC(*2)と同じになるであろう、という見通しのもとに、わが社の方針とにらみ合わせて設定しました。
それによると、収益性が変わらないとして、現在の二倍の人員で五倍の売上げを達成しなければなりません。
わが社は一〇年計画を基にして、三年計画をたてていますが、過去の実績をそのまま伸ばすと、三年後には赤字転落します。それを計画の線までもってゆくためには、これこれの収益力をもつ新製品を、これだけ開発してゆかなければならないのです……」という返答なのである。
なんというりっぱな態度であろうか。
優秀な企業は、トップの考え方が優秀なのである。賃金を根拠にしているとは、心憎いばかりのツボの押さえ方である。
中小企業では、装置工業などの少ない人員ですむものは別にして、賃金こそ最もおそろしい費用であり、最も高い信頼度で予測できる数字なのだ。
これに、これまた非常な確実さで計算できる経費を合算すると、内部費用の総額がつかめる。
しかし、その確実に発生する内部費用をまかなって、そのうえ、利益を出してゆくための収入のほうは、まったく不安定で保証などどこにもないのだ。
企業というものは、放っておけば赤字になり、倒産するようにできているのである。それを黒字にもってゆき、存続させなければならないのが経営者なのである。
最もおそろしく、最も信頼できる予測賃金に根拠をおいて、ここから出発して目標を設定するということは、中小企業にとっては、最も賢明な道であろう。
あなたの会社が、もしも中小企業であるならば、長期経営計画では、急騰する賃金をまかなって、会社を存続させるためには、どの数字がどのようにならなければならないかを、最低三年間、もう一つ欲を出せば五年先までつくってみるところから出発することを、おすすめする。
こうしてみると、それはたんに賃金だけ考えていてもダメなことがよくわかる。いやでも外部・内部の諸条件を分析し、合成してゆかなければならないことに気がつく。
そして、それが、新たな視野から企業を長期的にながめることになるのだ。
「わが社の方向づけ」ということは、具体的な数字の上に立って考えるのでなければ、抽象論になるおそれがあり、抽象論では経営はやれないのである。
まとめ
中小企業の長期計画の成功の鍵は、賃金から目標を設定することです。T社の事例から学ぶと、このアプローチは非常に効果的であることが明らかです。
T社は、中小企業として超優れた成績を上げています。その秘訣は、賃金水準を基にした長期目標を設定し、その目標に向かって計画を立てることにあります。彼らの長期計画は、現在の賃金水準と将来の賃金見通しに基づいており、それに従って売上目標や新製品開発を計画しています。
賃金は企業にとって最も確実に予測できる費用の一つであり、企業の収益に大きな影響を与えます。中小企業は内部費用を管理する必要があり、賃金や経費を適切に計画することが極めて重要です。しかし、利益を上げて企業を存続させるための収入は不安定であり、保証がない現実も直視しなければなりません。
中小企業の経営者は、賃金の急騰に対応するために、賃金に根拠を置いて目標を設定し、賢明な計画を立てるべきです。この計画は最低でも三年、できれば五年先を見据えたものでなければなりません。賃金だけでなく、外部と内部のさまざまな条件を分析し、総合的なビジョンを築くことが成功のカギです。
経営計画を具体的な数字に基づいて策定することは、企業を長期的に成功させるために不可欠です。抽象的な概念や抽象論に陥るのではなく、具体的なデータと視点から企業を見つめ直すことが重要です。中小企業経営者は、このアプローチを採用し、将来を見越して的確な目標を設定することで、持続可能な成長を実現できるでしょう。
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