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己を治むる者、ついには敬われる


■ 引用原文(日本語訳)

この世では自己こそ自分の主である。
他人がどうして(自分の)主であろうか?
賢者は、自分の身をよくととのえて、名誉を得る。
――『ダンマパダ』第15節(一五)


■ 逐語訳と用語解説

  • 自己こそ自分の主:自分の行動・感情・思考の主導権は、他人ではなく常に自分自身にある。
  • 他人がどうして主であろうか?:他人の期待や評価に自分を委ねてはならない、という自律の教え。
  • 賢者(パンディタ):自他を知り、内省と節度を重んじ、継続的に自己を修める人物。
  • 身をよくととのえる:生活・行動・言葉・心の整い。日々の一貫性ある実践。
  • 名誉(サッカラ/sakkāra):人々からの深い尊敬や敬意。社会的地位以上に、人格そのものへの信頼。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

「この世において、自分の人生を律するのは自分自身である。他人が自分の主人であることなどあり得ない。
賢者は、常に自分の行いを正しく整えることによって、他者から自然と敬意(名誉)を受けるようになる。」

ここで言う名誉は、地位や栄達ではなく、**「人格に対して払われる敬意」**です。


■ 解釈と現代的意義

この句は、「外的な肩書きではなく、内的な整いが真の敬意を生む」という仏教の倫理観を表しています。
現代社会では、称号やフォロワー数、報酬などで「評価されている」と思われがちですが、それらは一時の名声です。
この章句が示す名誉とは、「長年の誠実な行いによって、人格に向けて自然と集まる敬意」であり、奪われることのない信頼資産です。


■ ビジネスにおける解釈と適用

領域適用例
経営者の徳数字や成果でなく、人柄や日々の判断・社員への姿勢によって「敬意ある名誉」が得られる。
社員の信頼小さな約束を守り続ける人、誠実で謙虚な人が、周囲からの自然な尊敬を得る。
ブランド評価商品のスペック以上に、企業の振る舞いや社会への誠実な関わりが名誉となって返ってくる。
公共リーダーの姿勢注目されることを追わず、地道に整った判断と行動を積み重ねることで、後に名誉を得る存在になる。

■ 感興のことば(心得まとめ)

「整った人には、敬意が集まる」

名誉とは、求めて得るものではない。
それは、整った行いを積み重ねた者にのみ、
周囲が自然と捧げる静かな賛辞である。
だからこそ、まずは自分の主として、
日々を整えよ。


この節で『ダンマパダ』における「自己を主とする者の五段階の果報(目的→徳行→名声→名誉)」の流れが完結します。

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