――皇太子と親王の秩序こそ、万世の礎
太宗は家臣たちに「今、国家にとって最も急務とは何か」と問うた。
民の安定、異民族との調和、礼儀の涵養――それぞれの重視する理想が語られたが、褚遂良はこう述べた。
「最も急務なのは、皇太子と親王の立場を明確にし、万代にわたる規範とすることです」と。
太宗もまたその意見に深く同意し、自らの衰えを自覚しながら、次代への不安を吐露する。
皇太子と親王の補佐に賢人を付けること、親王付きの官僚は長年仕えさせず、私情や野望の芽を断つこと――
それは、太宗が未来の国家安定のために真剣に向き合った、制度と人事の知恵であった。
引用とふりがな(代表)
「但(た)だ太子(たいし)・諸王(しょおう)、須(すべか)らく定分(ていぶん)有るべし」
――皇太子と親王は、それぞれの立場を明確にせねばならぬ
「官人(かんじん)事(つか)えて王(おう)に久しければ、分義(ぶんぎ)深くして、非意(ひい)の闚(うかが)い、多く此れより作(お)こる」
――長く仕えれば情が生じ、思わぬ野望の火種となる
注釈(簡略)
- 高士廉・劉洎・岑文本・褚遂良:それぞれ唐代の名臣。太宗の問いに対し、民・異民族・礼・継承制度と異なる観点から国家の急務を論じた。
- 守器東宮(しゅきとうぐう):皇太子の職分を守ること。東宮は太子の居所の別称。
- 定分(ていぶん):それぞれの立場に応じた分を守ること。特に嫡子と庶子の線引きが重要視される。
- 四考(しかう):四年間の勤務評定。これを一区切りとし、官人を交代させる。
パーマリンク案(英語スラッグ)
succession-first
(継承こそ急務)order-in-lineage
(血筋に秩序を)wise-aides-keep-order
(賢者が秩序を守る)
この章は、太宗が自己の死後を見据えて制度の永続性を図る姿をよく示しています。継承の秩序が乱れれば、国もまた傾く――それを防ぐための深慮と実践が描かれています。
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