歴史に名を残すような功績を上げたり、大きな事業を成し遂げる人物というのは、
たいていの場合、**素直で柔軟な心を持ち、物事に対して円満に対応できる「虚円の士」**である。
こうした人は、自己主張ばかりせず、人の意見を素直に受け入れ、
また、対立を生まずに円滑に人や事を動かす知恵と器量を備えている。
反対に、失敗して物事を壊してしまう人、チャンスを逃してしまう人には、
たいてい**心が狭く、執着心が強く、片意地にこり固まって融通の利かない「執拗の人」**が多い。
こういう人は、自分の考えに固執して周囲と調和せず、
物事の流れを読み損ね、チャンスが来ても見過ごしてしまう。
つまり――
「素直であること」「柔軟であること」「円満に人と接すること」こそが、
大きな成功をつかむために必要な“人の質”であり、
逆に頑固で、執着に囚われた人格こそが、失敗の種なのだという、極めて実践的な人生訓である。
原文(ふりがな付き)
「功(こう)を建(た)て業(ぎょう)を立(た)つる者(もの)は、
多(おお)くは虚円(きょえん)の士(し)なり。
事(こと)を僨(やぶ)り機(き)を失(うしな)う者は、
必(かなら)ず執拗(しつよう)の人(ひと)なり。」
注釈
- 虚円の士(きょえんのし):虚心で柔らかく、円満な性格の人物。素直で対人調和力が高い人。
- 僨る(やぶる):物事を失敗させる。転ぶ、崩れる。
- 機を失う(きをうしなう):タイミングや好機を逃すこと。
- 執拗の人(しつようのひと):意固地で、しつこくこだわりを捨てられない人物。心が狭く柔軟性に欠ける。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
success-needs-humility-and-flexibility
(成功に必要なのは素直さと柔軟性)rigid-minds-fail
(固まった心は失敗する)graceful-people-build-legacies
(円満な人が功績を築く)
この条は、ビジネスや人間関係、組織運営にもそのまま当てはまる普遍的な心理と行動原則です。
現代でも「人間性が仕事の成否を分ける」と言われるように、
**“人柄そのものが成果を左右する”**という事実を、古典の言葉で端的に示してくれている珠玉の一節です。
1. 原文
建功立業者、多虚圓之士。
僨事失機者、必執拗之人。
2. 書き下し文
功(こう)を建て、業(ぎょう)を立つる者は、多くは虚円(きょえん)の士なり。
事を僨(ふん)じ、機を失う者は、必ず執拗(しゅうこう)の人なり。
3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)
- 「大きな功績をあげ、事業を成し遂げる人は、多くの場合、謙虚で柔軟な人物である」
- 「反対に、物事を失敗させ、好機を逃す人は、必ずと言ってよいほど、頑なで融通のきかない人である」
4. 用語解説
- 建功立業(けんこうりつぎょう):功績を立てて、事業を築き上げること。
- 虚円(きょえん):謙虚で偏らず、柔らかく調和的な性質。自己を空しくして人に応じる徳。
- 僨事(ふんじ):物事を失敗させること。
- 失機(しっき):チャンスを逃すこと。
- 執拗(しゅうこう):頑固で一つの考えに固執し、融通が利かないこと。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
大きな功績を成し遂げるような人物は、多くの場合、謙虚で柔軟な性格の持ち主である。一方で、物事を失敗させたり、チャンスを逃したりする人物は、必ずといってよいほど、頑固で考えを曲げない人である。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「成功する人の共通点は“柔軟性”と“謙虚さ”にあり、失敗する人は“頑固さ”と“固執”に陥る」**という、極めて実践的な人生哲学です。
- “虚円”とは、自分を空(むな)しくして他人を受け入れる柔軟性。
- “執拗”とは、視野が狭く、意地になって状況を見誤る硬直性。
これは、変化の激しい現代社会においてこそ重要な資質です。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
●「柔軟なリーダーこそ成果を出す」
- 状況に応じて自らの意見を修正できる謙虚さと、周囲の意見を吸収する柔軟性を持つリーダーが、長期的に功績を上げる。
- “私はこう思うが、あなたの案も聞かせてほしい”と言える態度が組織を動かす。
●「頑なな執着が失敗を招く」
- 自分の考えに固執しすぎると、時流や現場の声を無視し、機会損失につながる。
- たとえば、失敗している企画にこだわり続け、修正や撤退が遅れることがある。
●「変化を受け入れる“虚円の心”が成功の鍵」
- チームやプロジェクトを成功に導くには、“勝ちたい”よりも“活かしたい”という発想が必要。
- 柔らかさこそ、最強の強さ。
8. ビジネス用の心得タイトル
「剛より柔、固より融──成果を生むのは“しなやかな心”」
この章句は、成功の核心にあるのは**「しなやかで謙虚な姿勢」であり、敗北の種は「こだわりと頑固さ」**にあると教えています。
- 自己を抑え、場に応じ、他者を活かす。
- 一つの考えに執着せず、必要なら捨ててでも前へ進む。
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