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盛儀よりも、民の安寧を

—見せかけの栄光より、実のある政治を

突厥は平定され、瑞祥は現れ、五穀豊穣――誰もが皇帝の封禅を勧める中、魏徴はただ一人反対を貫いた。
「功績はあっても、民はまだその恩に浴していない」「収穫は続いていても、倉は空である」「礼を尽くす余裕は、まだない」
――魏徴は、国家の本質が未だ充実していないことを理由に、見せかけの盛儀を戒めた。

さらには、「荒れた大地を外国の使節に見せ、期待に報いることもできず、民を酷使するだけでは、徳を損なうだけだ」とも。太宗はその言葉に深く頷き、封禅を取りやめた。


原文(ふりがな付き引用)

「陛下(へいか)の功(こう)高(たか)しと雖(いえど)も、民(たみ)未(いま)だ恵(めぐ)みを懐(おも)わず。
徳(とく)厚(あつ)しと雖(いえど)も、沢(たく)未(いま)だ旁流(ほうりゅう)せず。

年(とし)積(つ)みて稔(みの)ると雖(いえど)も、倉廩(そうりん)虚(むな)し。

有人(ひと)有(あ)りて、長(なが)く患(うれ)い、療(りょう)理(じ)して且(しばら)く愈(い)えども、皮骨(ひこつ)僅(わず)かに存(そん)す。
便(すなわ)ち一石(いっこく)の米(こめ)を負(お)いて、日(ひ)に百里(ひゃくり)を行(おこな)はんと欲(ほっ)すれば、必(かなら)ず得(え)ず」


注釈

  • 封禅(ほうぜん):泰山の頂で天を祀り、地に感謝を捧げる、皇帝による国家的盛儀。
  • 瑞祥(ずいしょう):吉兆や自然現象の良い前触れ。天命と徳を象徴する。
  • 旁流(ほうりゅう):四方にくまなく恩沢が行きわたること。
  • 倉廩(そうりん):穀物倉。豊作であっても、貯蓄が追いついていない状況を指す。
  • 庸夫邪議(ようふじゃぎ):世間の凡人が語る根拠のない噂や風評。

教訓の核心

  • 国の外面を飾るより、内実を整えることが優先されるべきである。
  • 功を誇るより、民の疲弊を知り、慎みを持つのが為政者の徳。
  • 過剰な演出や儀礼は、かえって国家の信用や財政を損なう。
  • 名より実を取り、派手さより安寧を重んじることが、真の治世の姿勢。
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