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己の業に蝕まれる、鉄のような愚かさ


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📖 引用原文(日本語訳)

「鉄から起ったものが、それから起ったのに、鉄自身を食いつくすように、悪をなしたならば、自分の業が、静かに気をつけて行動しない人を悪いところ(地獄)にみちびく。」
―『第九章 行ない』より


🔍 逐語訳(意訳)

「鉄から生じた“さび”が、やがて鉄自身を内側から食いつぶすように、
人がなした悪は、外からではなく自らの内部から破滅を招く。
とくに、慎重さや省察なく生きる者は、
その静かに積もった業によって、自ら地獄(最悪の苦しみ)へと導かれてしまう。


🧘 用語解説

  • 鉄のさび(ローハ・カンチャン)
    自分自身の中から生まれ、自分を損なうものの象徴。
    仏教では「煩悩」や「悪行」がこのように表現される。
  • 静かに気をつけて行動しない人(アパッマッタ)
    慎みなく、自省もなく、行動に無自覚なまま生きる人。
    仏教で重要な「気づき(サティ)」を欠いた生き方を指す。
  • 地獄(ニラヤ)
    仏教における苦しみの極地。象徴的には精神的・倫理的な破滅を意味する。

🪷 全体の現代語訳(まとめ)

この節は、人間が自らの行いによって、静かに、しかし確実に自分を壊していくという因果の真理を、
「鉄とさび」の喩えを用いて表現しています。
悪とは、外から来る敵ではなく、内から自分を蝕む毒である。
それに気づかぬ者、気づいても改めない者は、
やがて取り返しのつかない苦しみの淵に至るのです。


🏛 解釈と現代的意義

この句は、現代においても非常に深い洞察を与えます。
多くの問題や失敗は、外部要因よりも、自らの未熟・慢心・不注意によって引き起こされます。
とくに自己反省を欠いたまま、自分の行いに無自覚な人は、
目に見えない「さび」を蓄積し、自滅への道をたどるのです。
その“さび”とは、不誠実、偽り、ごまかし、倫理の軽視など、
日常の中で静かに積もっていくものです。


💼 ビジネスにおける解釈と適用

観点実践的応用
自己破壊型リーダー慢心・独断・非倫理的行動は、組織や部下を苦しめるだけでなく、自分自身の信頼と立場を蝕む。
企業不祥事の内因性多くの企業スキャンダルは、外圧よりも内部の倫理劣化・隠蔽体質・傲慢から起こる。
自律的な倫理管理法律がなくとも「内側から崩れない」自律的な判断と行動こそが、持続的企業文化を支える。
“気づき”の組織風土小さな異変や違和感に敏感であることが、大きな危機を防ぐ。気づきを育てる仕組みが重要。

🧭 心得まとめ

「破滅は、いつも“内側”から始まる」

人は、自らの内に生じたさびに気づかず、
それをそのままにしてしまう。
そのさびは、やがて鉄を崩すように、
魂や人格、人生そのものを食いつぶす。
だからこそ、
小さな誤り、小さな違和感に敏感であり続けること。
それが、業に縛られず生きる唯一の道である――
この節は、まさに第九章「行ない」の締めくくりとしての核心を語っています。

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