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欲望にさまよう心に、鉤(かぎ)を打て


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■引用原文(日本語訳)

第二三章 象(三二六)
この心は、以前には、望むがままに、欲するがままに、快きがままに、さすらっていた。
今やわたくしはその心をすっかり抑制しよう、
象使いが鉤をもって、発情期に狂う象を全くおさえつけるように。


■逐語訳

  • この心は:自己の内なる心・意識。
  • 以前には:修行以前、目覚める前。
  • 望むがままに、欲するがままに、快きがままに:欲望・感情・快楽の赴くままに。
  • さすらっていた:目的もなく彷徨い、定まらぬままに動いていた。
  • 今やわたくしは:現在、自覚を持ち始めた修行者の決意。
  • その心をすっかり抑制しよう:乱れる心を完全に制御し、静かにする。
  • 象使いが鉤をもって:調教師が、訓練具(鉤)を使って制御するように。
  • 発情期に狂う象を全くおさえつけるように:本能のまま暴れる存在を力強く制するたとえ。

■用語解説

用語解説
心(チッタ)仏教における「心」は、感情・思考・欲望などを含む中心的な働き。
欲するがままに欲望(タンハー)に従い、自制なく行動する様子。
象使いと鉤(あんがく)象を訓練する際に用いられる器具。訓練・統御の象徴。
発情期に狂う象制御不能な心の象徴。暴走した感情・欲望のたとえ。

■全体の現代語訳(まとめ)

この私の心は、かつては欲望や快楽のままに、定まりもなく彷徨っていた。
だが今、私はその心を制御しようとしている。
ちょうど象使いが、鉤を使って本能に駆られた象を厳しく抑えるように。


■解釈と現代的意義

この節は、「心の訓練」の大切さと、「内面の暴れ馬(象)」を制する決意を強く表現したものです。
仏教では、心は最も制御の難しい対象とされ、その暴れ心を御することが修行の中心テーマです。

象使いと象のたとえは非常に象徴的であり、本能に任せたままでは破滅的な行動に至るが、自覚と努力によって心は調えられるということを示しています。
これは自己変革の出発点とも言える章句です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
感情コントロール怒りや不安、衝動的な発言や判断に振り回されるのではなく、「鉤を持つ象使い」のように、自分の心に手綱をつける意識が必要。
セルフマネジメント自由奔放に働くことは一見快適だが、持続性や信頼を損なう。計画性と自己規律が中長期の成功を支える。
意思決定力「やりたい」「今が楽」という衝動に流されず、冷静に長期的価値を考えて判断する力。
リーダーの姿勢組織を導くには、まず自らの心を調えること。自制のないリーダーは組織の不安定要因になる。

■心得まとめ

「心は制御すべき象、意志はその使い手」

私たちの心は、欲望・快楽・衝動に任せれば簡単にさまよい、混乱と後悔を生む。
しかし、自覚を持った意志が「象使い」となり、訓練と制御を行えば、心は大きな力として活かせる。
ビジネスにおいても、「感情や衝動をそのまま放っておく」のではなく、「訓練された心」で行動することが信頼と成果を生む鍵となる。


この節は、欲望や感情に流される現代人にとって非常に実践的な戒めと導きです。

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