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自分に厳しく、他人に優しく

—— 恨みを遠ざける生き方の基本

孔子は、人間関係における調和の原則を簡潔に、しかし深く語った。
「自分に対しては厳しく反省し、他人に対しては寛大であれば、恨みを受けることも、抱くこともなくなる」と。

これは、単に「やさしくしよう」という道徳ではない。
己を律することを出発点に、他者への寛容を育てる姿勢である。

人を責める前に、まず自分の至らなさを省みる。
その姿勢がある者は、自然と人から信頼され、トラブルや怨みごとも少なくなる。

徳のある人間関係は、「他者をどう扱うか」よりも、「まず自分をどう整えるか」から始まる。


原文とふりがな

「子(し)曰(い)わく、躬(み)自(みずか)ら厚(あつ)くして、人(ひと)を責(せ)むること薄(うす)ければ、則(すなわ)ち怨(うら)みに遠(とお)ざかる」


注釈

  • 「躬自ら厚く」:自分に対して厳しく、自戒を深く持つこと。自らの過ちに対して重く受け止める姿勢。
  • 「人を責むること薄く」:他人の過ちや欠点をあまり責めず、寛容な態度をとること。
  • 「怨みに遠ざかる」:恨まれず、また他人を恨むこともなくなるという、健全な人間関係のあり方を示している。

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  • blame-less-reflect-more(責めずに省みる)
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この章句は、信頼される人・争いを避ける人間関係・リーダーシップのあり方にも通じます。
批判や要求が飛び交いやすい現代にこそ、「まず自分を振り返る」この心得が必要とされているのかもしれません。

1. 原文

子曰、躬自厚、而責於人、則遠怨矣。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、躬(み)自(みずか)ら厚(あつ)くして、人(ひと)を責(せ)むること薄(うす)ければ、則(すなわ)ち怨(うら)みに遠(とお)ざかる。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 「子曰く、躬自ら厚くして」
     → 孔子は言った。「自分自身には厳しく(=負担を多くし)」
  • 「人を責むること薄ければ」
     → 「他人にはあまり厳しく責めずに寛容であれば」
  • 「則ち怨みに遠ざかる」
     → 「人からの恨みや反感を受けることはない」。

4. 用語解説

  • 躬(み):自分自身のこと。身体を意味するが、ここでは「自分自身」を指す。
  • 厚くする:責任や義務を重く担うこと。=自分には厳しくする。
  • 薄くする:軽くする。他人に対しては負担を少なくし、責めを緩やかにする。
  • 責むる:非難・指摘・要求すること。
  • 怨(うら)み:恨み、不満、反感、敵意。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「自分自身には厳しく責任を持ち、他人に対しては寛容に接すれば、人からの恨みや反感を買うことはない」。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「徳あるリーダーの在り方」**を示す孔子の道徳的実践論です。

  • 自己には厳しく、他者には寛容──これは孔子が一貫して説く仁(じん)の実践。
  • これは「謙虚さ」と「誠実さ」の表現であり、人間関係を円滑に保ち、信頼を築く基本姿勢です。
  • 人を批判したり責め立てたりする前に、自分自身が十分に努力しているかを問うべきという内省的な倫理観が表れています。

7. ビジネスにおける解釈と適用

◆ 「リーダーはまず自ら汗をかけ」

指示だけ出して自分は動かない上司は、部下に怨まれる。「自分がどれだけ動いているか」が組織の空気を決める。

◆ 「責任の押しつけは信頼を損なう」

ミスや不備があったとき、他人を責める前に自らの関与や支援の不足を省みる姿勢が信頼と尊敬を生む。

◆ 「要求と支援のバランスがチームを救う」

「なぜやらないのか」と責めるよりも、「何が障害か」「自分にできる支援は何か」と問う姿勢が、怨みではなく感謝を生む。

◆ 「管理職に求められる“率先垂範”」

リーダーが自分に甘く、部下に厳しければ、チームは崩壊する。“背中で示す”ことが最も強いメッセージとなる。


8. ビジネス用心得タイトル

「責める前に省みよ──“自ら厚く”が信頼を生む」


この章句は、現代の組織マネジメントや人間関係においても非常に有効な指針です。
リーダーシップ教育、人事評価指針、チームビルディングの基本原則としても活用できます。

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