企業の会議、とりわけ営業や販売に関する会議が「売上不振の原因追及の場」と化している状況は、決して珍しいことではありません。会議で目標と実績の差を確認した途端、「なぜ売上が伸びないのか」という責任追及の流れが定型化しているケースが多いのです。この結果、原因として挙げられるのは、なぜか担当者の力が及ばない外部要因に限られます。こうして、社内で誰も責任を取る必要がない「無責任の構図」が出来上がるのです。
こうした会議が繰り返されると、経営者の苛立ちはピークに達します。「もっと努力しろ」「やる気が足りない」といった叱責が飛び交う中、会議は形ばかりの終了を迎えます。しかし、このような会議から成果が生まれるはずもありません。出席者たちは、本来の目的である販売促進策を考えるのではなく、自分を守るための言い訳を準備することに注力してしまうからです。
では、売上不振の原因を追及することにどれほどの価値があるのでしょうか。実際のところ、それは「過去の結果」を悔やむ以上の意味を持たないのです。販売会議の本来の目的は、「未来の売上をどう作るか」という議論であり、そのための具体的な施策を打ち出し、迅速に実行に移すことにあります。
具体的な成功事例:S社の変革
産業機械メーカーであるS社では、従来型の営業会議から脱却した結果、大きな成果を上げました。同社ではこれまで、原因探求に終始する「売上不振会議」を続けていました。しかし、一倉方式と呼ばれる方法を採用したことで、会議はわずか15分で終了。しかも具体的な対策が決定され、即実行に移されました。
例えば、目標に対して不足していた5台分の売上については、「北海道で営業活動が不足している」という情報に基づき、専務を現地に派遣する決定がなされました。また、社長と営業部長にもそれぞれ1台の目標が割り当てられました。この結果、専務は北海道で2台を売り、社長も1台を販売。営業部長の1台は未達成でしたが、会議がもたらした効果は明らかでした。
この事例が示すのは、販売会議の目的を原因探求から「販売促進策の立案と実行」に切り替えることで、企業は即座に成果を出せるということです。
会議の新たなあり方:情報共有の場へ
販売会議の課題を乗り越えるためには、さらなる変革が必要です。B社では「営業会議」を廃止し、「情報会議」という新しい形式を導入しました。売上不振の原因を追求するだけの会議を無意味と判断した社長の決断によるものです。この情報会議では、過去の実績に縛られず、未来志向の議論が活発に行われるようになり、貴重な情報が次々と共有されるようになりました。
このような会議では、販売促進策を議論するだけでなく、市場の動向や競合他社の動きを把握し、それを基に自社の戦略を検討します。市場の変化を的確に捉え、それに対応するための柔軟な施策を立案することが求められるのです。
戦略情報会議の本質と目的
市場戦略を実行に移すための情報を集め、分析し、共有する。このプロセスを体系化したのが「戦略情報会議」です。この会議では、次のような視点が重要になります。
- 市場動向の把握
市場の状況や変化の方向性を正確に分析し、確認する。 - 自社活動の妥当性評価
現行の市場活動が戦略に合致しているかを検証し、効果を測定する。 - 競合動向の分析
競合他社の戦略を把握し、自社の優位性を維持・強化するための施策を考える。
これらの情報の多くは、現場の社員、特に営業担当者が顧客訪問を通じて直接収集したものに基づいています。現場の生の情報は、机上のデータでは得られない具体性を持ち、それを活用することで戦略の精度が高まります。
未来を切り開く会議運営のポイント
戦略情報会議のゴールは、過去を嘆くのではなく、未来を築くことにあります。次の行動計画を具体的に決め、実行に移すことが最終的な目的です。そして、経営者自らが現場で新たな情報を収集し、それを基に戦略を柔軟に調整していく。このサイクルを回すことで、企業の競争力は飛躍的に向上します。
今求められているのは、従来の枠組みを超えた革新的な会議スタイルです。市場の変化に即応できる柔軟な戦略こそが、企業を成功へと導く鍵となるのです。
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