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戦略情報会議

多くの販売会議や営業会議の現実を眺めてみると、その多くが「売上不振の原因を洗い出し、責任を追及する場」に成り果てているのが実情だ。目標と実績のギャップが確認されると、必然的に「なぜ売上が上がらないのか」という問いが飛んでくるのが常套手段となっている。

「なぜこうなったのか」と問われれば、当然「原因はこれこれだ」といった結論に至る。そして、その原因はなぜか担当者自身にはなく、常に担当者の外側にある何かに帰着する。それは決まって担当者がコントロールできない要因であり、結局のところ、社内には売上不振の責任者など存在しないという結論が導き出される。こうして、誰も傷つかず、誰も責任を負わない状況に安堵の空気が流れる。

納得がいかないのは社長だ。その苛立ちは、ちょうど今、売上不振の責任がないと認定されたばかりの社員たちに向けられる。「やる気が足りない」「責任感がない」「努力が不足している」といった叱責が浴びせられ、それを合図に会議は幕を閉じる。多少皮肉めいた表現をしたが、現実はまさにこれと変わらないのが実情だ。

こんな会議を何百回繰り返したところで、効果が上がるはずがない。参加者たちは、販売促進のアイデアを胸に秘めて会議に臨むのではなく、いかに「言い訳」を巧みにこなすかを事前に研究してから会議に臨んでいるからだ。そもそも、最初から誰も販売促進策など真剣に考えていないのが現状だ。

そもそも、売上不振の原因を追及して何が得られるというのだろうか。これはまさに、死んだ子の歳を数えるようなものだ。本来、販売会議の目的は販売促進にあるはずだ。であれば、まず「どうすれば売上を伸ばせるのか」という前向きな議論が行われ、それを基に具体的な施策を決定し、即座に行動に移すことが求められる。

S社は産業機械を製造するメーカーだ。S社の社長曰く、「これまでの営業会議はまさに『売上不振の原因探求会』そのものでした。しかし、一倉さんにアドバイスを受けて、前回から『一倉方式』を取り入れたところ、驚くような成果が生まれました。これまで二時間もかかっていた営業会議が、たったの十五分で終わったんです。」

目標と実績を比較した結果、売上不足は機械5台分だと判明した。そこで、従来の原因探求を完全にやめ、対策に一点集中することに決定した。その対策とは、「最近、北海道地域で営業活動をしていないため、売上目標を3台と設定し、専務が即座に北海道へ飛ぶ。さらに、社長が1台、営業部長が1台をそれぞれ責任をもって売る」というものだった。

一週間後、専務が北海道で2台を売り、自分も1台を売ることに成功した。営業部長の1台だけが売れ残ったが、それでも従来のやり方では到底達成できなかった成果を上げることができた、と社長は語る。

正しい販売会議のあり方とは、このように前向きな販売促進策を決定し、実行に移すことだ。しかし、こうした取り組みはあくまで目の前の課題への対処に過ぎない。本来、販売会議はそれを超えた次元の高い議論が行われる場であるべきだ。未来を見据えた戦略や新たな市場の開拓、長期的なビジョンの共有など、より本質的なテーマに踏み込む必要がある。

B社では「営業会議」を廃止し、「情報会議」へと切り替えた。売上不振の原因を探るだけの会議に意味がないと気づいた社長の果断な判断だった。当初、社員たちは戸惑いを見せたものの、次第にその意図を理解するようになり、最近では発言が活発化し、会議の雰囲気が一変したという。その結果、この会議からは実に貴重な情報が数多く得られるようになったとのことだ。

B社の情報会議は、従来型の営業会議から脱却するための一つのヒントを示していると言えるだろう。毎月、先月の販売実績を検討し、それに一喜一憂したり、売上不振の原因を云々したところで、何も生まれない。このような会議に終始している限り、市場戦略を推進するどころか、むしろ足を引っ張るだけだ。販売会議は過去の結果を嘆く場ではなく、未来を切り開くための創造的な議論の場でなければならない。

市場戦略を持たない会社は論外だが、少なくとも市場戦略を掲げているのであれば、その戦略に焦点を合わせた会議こそが本来あるべき姿だ。私はこれを「戦略情報会議」と呼びたい。B社の情報会議は、その理念に一歩近づいた形だと言える。この会議の狙いは、戦略を実行に移すための具体的な情報を集め、共有し、活用することであり、単なる業績の振り返りとは一線を画している。

この会議で焦点を当てるべきは、市場の状況とその変化の方向を的確に把握し、確認することにある。そして次に検討すべきは、自社が展開している市場活動の妥当性とその効果の測定だ。このプロセスを通じて、戦略の方向性が適切であるかを再評価し、必要な調整や新たな施策を見出すことが、会議の本来の目的となるべきである。

そのために欠かせない情報源として、各種の刊行物、見本市や展示会の記事、レポートなどが挙げられる。しかし、最も重要な情報は、やはり社長をはじめとする社員一人ひとり、特にセールスマンたちが顧客訪問を通じて直接収集したものである。現場の声や具体的な顧客の反応、市場の生の情報こそが、戦略を現実に即したものとするための基盤となる。これらの情報を的確に整理し、共有することが、会議を意味のあるものにする鍵となる。

社長以下、社員たち自身の活動を通じて得られた情報ほど価値のあるものはない。それらは、まさに現場で直接目にし、耳で聞き、肌で感じ取った生の情報だからだ。この実感に裏打ちされた情報こそ、机上のデータや二次的な資料にはないリアリティと具体性を持ち、戦略を的確に方向づけるための最も信頼できる資源となる。

これらの情報を丹念に分析し、総合した上で、自社の市場戦略と照らし合わせる。戦略に誤りはないだろうか。実際の状況にそぐわない部分はないか。市場の変化に適切に対応できているか。重点領域に対する資源投入は十分か。不急不要な活動に貴重な資源を浪費していないか。競合他社の動向はどうか。攻略対象となる企業への攻撃が手薄になっていないか――これらすべての問いは、市場戦略を基軸として検討されなければならない。市場の現実と戦略の整合性を常に確認し、修正すべき点を見極めることこそが、この会議の本質的な目的である。

これらの検討を通じて、まず当面必要となる新たな市場活動を明確にし、同時に強化すべき活動、中止または縮小すべき活動を具体的に決定する。そして、何より重要なのは、これらの戦略情報に基づき、社長自身が現場で新たに収集した情報を統合することだ。このプロセスを経て、現状に即した、より優れた市場戦略を構築することが最終的な目標となる。市場の動向に応じた柔軟な戦略の更新こそが、競争力を高め、成功を導く鍵である。

要するに、販売会議は単なる「責任追及」や「売上不振の原因探し」に終始すべきではなく、より積極的な「戦略情報会議」として運営されるべきです。以下のポイントを中心に、戦略情報会議の具体的な方向性を見ていきましょう。

戦略情報会議の重要ポイント

  1. 販売促進の前向きな対策
  • 販売会議は、売上不振の原因探求ではなく、具体的な対策を議論する場とします。売上目標が達成できていない場合でも「どの市場で何を強化すれば成果が上がるのか」というように、現実的かつ前向きな解決策を共有することが目的です。
  1. 情報共有と分析
  • 会議は「情報会議」として、顧客や市場、競合企業からのフィードバックを収集し、戦略的な意思決定に必要な情報を分析する場とします。特に、実際の現場からの「生の情報」を重視し、実際に得られたデータや顧客からの声を戦略に反映します。
  1. 市場戦略に基づく行動計画
  • 市場戦略に基づき、各担当者が実行可能な行動計画を設定します。会議中では各担当者がどう行動するか具体的なステップが明確になり、その進捗も次回会議で報告されるようにします。
  1. 社長自らの戦略的関与
  • 社長が積極的に戦略情報会議に関わり、自らも顧客と接することで、会議で得られた情報をもとに自社の戦略を検討、修正、強化していくことが求められます。これにより、戦略が現場のリアルな状況とマッチしたものになります。

戦略情報会議で扱うべき主なテーマ

  • 市場の状況と動向
    顧客ニーズの変化、競合の動向、特定地域やターゲット層での傾向など、市場の動きを把握し分析します。
  • 現行の戦略の評価
    現在の販売戦略の妥当性や改善の必要性を定期的に評価し、どのリソースをどの領域に注力するか再検討します。
  • 資源の適切な投入
    各リソースの配置や使用状況を見直し、重要な市場への優先的投入や、不必要な活動の縮小を決定します。
  • 顧客訪問の情報活用
    社長や営業担当が直接顧客と接する中で得た現場の情報を共有し、戦略の現実性を高めます。

会議を「販売促進のための実践的な場」に変える

戦略情報会議の目的は、最終的には販売促進につなげることです。社長が主導し、各メンバーが自発的かつ積極的に「売上拡大の方法」に関する意見や行動計画を持ち寄り、チーム全体での販売力を最大限に引き出す場とすることが大切です。

販売会議が販売促進を目的にした実践的な場となることで、効果的な行動計画が立てられ、売上拡大に向けて具体的かつ迅速に行動できる体制が整います。

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