人生において、次の四つの“心のクセ”に惑わされてはならない。
- くよくよするな(毋憂拂意)
思い通りにいかないからといって、いつまでも思い悩んでいてはならない。
状況は変わるし、失敗もまた学びの一部である。前を向いて動くことの方が大切。 - いい気になるな(毋喜快心)
物事が自分の思いどおりに進んでいるからといって、驕ってはならない。
順調なときほど、油断や慢心が生まれやすい。それが崩壊の始まりになる。 - 将来を甘く見るな(毋恃久安)
今が平穏無事だからといって、未来もずっとそうだとは限らない。
現状にあぐらをかかず、常に備えと慎重さを忘れてはならない。 - 困難に気後れするな(毋憚初難)
最初に立ちはだかる困難、挑戦、あるいは他人の冷たい視線――
こうした「初動の壁」を怖れていては、何も始まらない。
大きなことを成し遂げるには、「最初の一歩」を恐れない勇気が不可欠である。
まさにこの四つこそが、心の柔軟性と持続的な力強さをつくる秘訣であり、
君子(徳ある人)はこの四面から自分の感情を律していかなければならない。
原文(ふりがな付き)
「拂意(ふつい)を憂(うれ)うること毋(な)かれ。
快心(かいしん)を喜(よろこ)ぶこと毋かれ。
久安(きゅうあん)を恃(たの)むこと毋かれ。
初難(しょなん)を憚(はばか)ること毋かれ。」
注釈
- 拂意(ふつい):思い通りにいかないこと。気に食わない結果。
- 快心(かいしん):思い通りにいって、気分が良くなること。
- 久安(きゅうあん):長く平穏が続いている状態。
- 初難(しょなん):始めに立ちはだかる困難・壁・試練。周囲の反対なども含む。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
steady-heart-in-all-seasons
(どんな時も心を安定させよ)fear-no-failure-nor-success
(失敗も成功も恐れるな)start-strong-finish-stronger
(勇気を持って始め、強く終えよ)
この条は、**「順境も逆境も、どちらも心を乱す要因になりうる」**という、極めて現実的な人間心理への洞察に満ちています。
だからこそ、浮かれず・落ち込まず・油断せず・ひるまず――中庸と勇気をもって前に進むことが、人格と成果を両立させる秘訣となります。
1. 原文
毋憂拂意、毋喜快心。毋恃久安、毋憚初難。
2. 書き下し文
払意(ふつい)を憂うること毋(なか)れ。快心を喜ぶこと毋れ。
久安(きゅうあん)を恃(たの)むこと毋れ。初難(しょなん)を憚(はばか)ること毋れ。
3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)
- 「自分の気に入らないことがあっても、それを憂いてはならない」
- 「心地よいことがあっても、それに浮かれてはならない」
- 「長く平穏が続いていることに安心しきってはいけない」
- 「最初の困難に尻込みしてはならない」
4. 用語解説
- 払意(ふつい):意に反すること、自分の思い通りにいかない状況。
- 快心(かいしん):心地よく、満足感を与える出来事。
- 久安(きゅうあん):長く続く平穏・安泰の状態。
- 初難(しょなん):物事の始まりに生じる困難や障害。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
自分の思い通りにならないからといって落ち込んだり、逆に気分のよい出来事に浮かれたりしてはいけない。長く安定した状態が続くことに甘えて油断してもならず、物事の始まりに起こる困難を恐れて、挑戦を避けることもしてはならない。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「感情に振り回されず、状況に惑わされず」という中庸の精神、「冷静さと勇気」**を重視する心構えを説いています。
- 不快なことがあっても、それは人生の一部。過度に反応すべきではない。
- 喜ばしいことがあっても、それが永遠に続くとは限らない。油断は禁物。
- 平穏が続いても、それを当然と考えてはならない。備えを忘れずに。
- 最初の苦しさや困難を恐れて逃げれば、何も成し遂げられない。
つまり、「油断せず、恐れず、調子に乗らず、悲観せず」──バランスの取れた心を保つことが、人生でも仕事でも成功の鍵であると教えています。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
●「好調でも浮かれるな、逆風でも沈むな」
- ビジネスの世界では、順境・逆境が交互に訪れる。感情に左右されると判断を誤る。
- 成功しても慢心せず、失敗しても立て直せる冷静さを持つことがリーダーに求められる。
●「“平穏”の中に潜むリスクを忘れるな」
- 長期的な安定が続くと、緊張感が失われ、変化への対応力が落ちる。
- 「いつまでも続く平和はない」──だからこそ備えを怠らないことが重要。
●「スタート時の苦労を恐れるな。そこが“分かれ道”」
- 新規プロジェクト、転職、起業など、最初の壁を乗り越えられるかが成功の鍵。
- 最初の苦労こそ成長の機会。避けるのではなく、正面から向き合うべき。
8. ビジネス用の心得タイトル
「順境に酔わず、逆境に沈まず──冷静と挑戦が真の胆力」
この章句は、人生や仕事の流れにおいて、感情に一喜一憂せず、また“居心地の良さ”や“先入観”に支配されない心のあり方を説いています。
特に不確実性が高まる時代においては、こうした“精神のフラットさ”が、ブレない判断力と信頼される人格の根幹になります。
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