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小さな努力の積み重ねが、大きな成果を生む

粗末な縄でも、長くこすり続ければ木を切ることができ、
わずかな水滴でも、時間をかければ堅い石に穴をあける――
それほどに「継続する力」は強く、学びの道においても同じことがいえる。

だからこそ、正しい生き方を求め、道を学ぼうとする者は、
焦らず地道に「努めて求める姿勢」を持ち続けなければならない。

そして、努力を尽くしたあとは、天のはたらきに身を委ねるのがよい。
水が満ちれば自然と溝ができ、瓜が熟せば自然とへたが落ちるように、
時が至れば、道もまたおのずと開けるのである。

急がず、たゆまず、信じて続けること――
それが、道を得る者の本当の姿勢だ。


原文とふりがな付き引用

縄鋸(じょうきょ)も木(き)を断(た)ち、水滴(すいてき)も石(いし)を穿(うが)つ。
道(みち)を学(まな)ぶ者(もの)は、須(すべか)らく力索(りきさく)を加(くわ)うべし。
水(みず)到(いた)れば渠(みぞ)成(な)り、瓜(うり)熟(じゅく)せば蒂(へた)落(お)つ。
道(みち)を得(え)る者(もの)は、一(いつ)に天機(てんき)に任(まか)す。


注釈

  • 縄鋸木断(じょうきょもくたち):縄のこでも繰り返せば木が切れる。小さな力でも継続すれば大きな成果を生む。
  • 水滴石穿(すいてきせきせん):水滴が石に穴をあける。継続の力のたとえ。
  • 力索(りきさく):力を尽くして求める。努力を続けること。
  • 水到渠成(すいとうきょせい):水が満ちれば溝は自然とできる。物事が自然に成就するという意味。
  • 瓜熟蒂落(うりじゅくしていらく):瓜が熟せば自然にへたが落ちる。時機が来れば結果は自然に現れる。
  • 天機(てんき):天のはからい、自然の理。人知では及ばぬ摂理。

1. 原文

繩鋸木斷、水滴石穿。學者須加力索。水到渠成、瓜熟蒂落。得者一任天機。


2. 書き下し文

縄鋸(じょうきょ)も木(きを)断(た)ち、水滴(すいてき)も石(いし)を穿(うが)つ。
学(まな)ぶ者は須(すべか)らく力索(りきさく)を加(くわ)うべし。
水(みず)到(いた)れば渠(きょ)成(な)り、瓜(うり)熟(じゅく)すれば蒂(てい)落(お)つ。
道(みち)を得(え)る者は一(いつ)に天機(てんき)に任(まか)す。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「粗末な縄で木も切れ、雫が落ち続ければ固い石にも穴が開く」
  • 「だから学問をする者は、力を尽くして根気よく努力しなければならない」
  • 「しかし一方で、水が満ちれば自然と水路ができ、瓜が熟せば蔕(へた)は自然と落ちる」
  • 「つまり“道”を得る者は、すべて天の機(=自然のタイミング)に任せるべきである」

4. 用語解説

  • 縄鋸(じょうきょ):縄製の簡単な鋸(のこぎり)。粗末な道具でも使い方次第で成果を出せる。
  • 水滴石穿(すいてきせきせん):水の滴が絶えず落ちれば、石をも穿つという故事。努力の積み重ねの象徴。
  • 力索(りきさく):「力を入れて求めること」。真剣に努力すること。
  • 水到渠成(すいとうきょせい):水が流れ込めば自然に溝(みぞ)ができる=準備が整えば自然と物事が成る。
  • 瓜熟蒂落(うりじゅくしてていおつ):瓜が熟すと自然に蔕(へた)が落ちる=無理せず自然の成就を待つこと。
  • 天機(てんき):天の理、自然の理法、または天命・運命的なタイミングの意。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

縄でさえも長く引けば木を切ることができ、水滴も続けて落ちれば硬い石にも穴が開く。
だから学ぶ者は、あきらめずに努力と継続を重ねるべきである。
しかし、必要な時が来れば水は自然に水路をつくり、瓜が熟せばへたは自然と落ちるように、
“道”を得るためには、最終的には天のはからいに身を任せることも大切なのだ。


6. 解釈と現代的意義

この章句が説くのは、「努力すべきとき」と「任せるべきとき」の絶妙なバランスです。

  • 前半:努力の力を信じよ
     → 根気と継続によって、どんなに難しそうなことでも成し遂げられる。これは“人事を尽くす”段階。
  • 後半:自然の成就に委ねよ
     → ある時点からは、過剰に操作せず“物事の自然な成熟”を待つ。これは“天命を待つ”境地。

これは、儒教的な努力主義と、道家・仏教的な無為自然・無執着の両立という、東洋思想の精髄がここに表れています。


7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「努力」と「タイミング」を見極めよ

  • 成果が出ないときに焦るのではなく、今は“力索”の時か、“天機”を待つ時かを判断する知恵が重要。

✅ プロジェクト進行にも“熟す時”がある

  • 戦略や施策も、無理に早く動かそうとすれば崩れることがある。
     → 準備が整い、状況が熟す“ティッピングポイント”を見極めること。

✅ 人材育成にも「撒履」と「蒂落」の考えを

  • 教え込みすぎず、必要な学びの種を与えたら、“本人の熟成”を待つ余裕を持つ。

✅ 粘りと静観、両方できる人が最強

  • 自分の中で「努力型の自分」と「委ねる型の自分」を共存させるマインドセットが、ストレスにも強くなる。

8. ビジネス用の心得タイトル

「削りつつ待て──成すべき時と、熟すべき時を見極めよ」


この章句は、目標設定とタイミング判断を重視するビジネスリーダー育成や、PDCAサイクルにおける“熟成フェーズ”の重要性理解にも活用できます。

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