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相手が誰であれ、自分の品位と軸を失わない

つまらない人(小人)と接する際には、
その無礼や理不尽に対して厳しく接することはたやすい。
しかし、相手の言動を非難する一方で、
その人間そのものまで憎まないようにするのは難しい。
また、偉い人(君子)に対しては、
自然とへりくだる態度になるのは容易いが、
そこに節度ある「礼」を保ちつつ、
卑屈に流れないようにするのは難しい。
人の大小・立場・態度によって自分の品位を上下させるのではなく、
常に心の中心にある「礼」と「節度」を守りたい。
それが、他人に支配されない、確かな自我の在り方である。


「小人(しょうじん)を待(ま)つは、厳(げん)に難(かた)からずして、悪(にく)まざるに難し。
君子(くんし)を待つは、恭(うやうや)しくするに難からずして、礼(れい)有(あ)るに難し。」


注釈:

  • 小人(しょうじん)…心が狭く、利己的で品格のない人。卑しい者。
  • 厳に難からずして…厳しく接すること自体は難しくない。
  • 悪まざるに難し…その人間を憎まないようにするのは難しいということ。冷静な距離感を保つ重要性。
  • 君子(くんし)…人格的に優れた立派な人。道を修めようとする者。
  • 恭に難からずして…敬意をもって接することは自然にできる。
  • 礼有るに難し…敬意が過ぎて卑屈にならず、礼節を保った接し方をするのが難しい。
目次

1. 原文

待小人、不難於嚴而難於不惡。
待君子、不難於恭而難於有禮。


2. 書き下し文

小人を待つは、厳にすることは難からずして、悪まざるに難し。
君子を待つは、恭しくすることは難からずして、礼有るにすることに難し。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「小人を待つは、厳にすることは難からずして、悪まざるに難し」
     → 器の小さい人物に対して厳しく接することは容易だが、憎しみを抱かずに対応するのは難しい。
  • 「君子を待つは、恭しくすることは難からずして、礼をもって接するのは難しい」
     → 立派な人物に対して丁重に接することはたやすいが、真に礼を尽くすことは意外と難しい。

4. 用語解説

  • 待(たい):対応する、接する、取り扱うこと。
  • 小人(しょうじん):徳のない人、器の小さい人物、利己的で心の狭い人。
  • 君子(くんし):徳の高い人、人格者。思慮深く節度を持つ立派な人。
  • 嚴(げん):厳格に接すること、厳しく対応すること。
  • 惡(にく)む:憎む、嫌悪する、内心で敵意を抱くこと。
  • 恭(うやうや)しくする:表面的に丁寧に振る舞うこと。
  • 有禮(れいある):礼節・敬意の心を真に持って接すること。形式だけでなく誠意が伴うこと。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

品性の低い人に対しては、厳しく接するのは難しくないが、心の中で嫌悪せずに対応することは難しい。
逆に、立派な人物には表面的に丁重に接するのは簡単だが、真に礼を尽くして敬意を示すのは意外と難しい。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、人間関係における内面のバランスと真の礼節について深く掘り下げています。

「小人」との関係では、態度以上に内心でどう向き合うかが問われます。憎しみの感情を抱かずに、冷静に対応できるかどうかが本質です。

「君子」に対しては、形式的な丁寧さではなく、本物の敬意と礼節があるかどうかが問われます。

つまり、外面よりも内面の成熟と節度が試されるのです。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 苦手な相手に“冷静な対応”を保てるか

部下や顧客、取引先など、価値観が合わず不快に感じる相手に対して、嫌悪感を表に出さず、理性的に対応する力が求められます。これはEQ(感情知性)に直結する重要なスキルです。

● 権威者や成功者に“真の礼”を尽くせるか

上司・役員・著名人などに対して、表面的に丁寧な態度を取るのは誰でもできますが、本質を見抜き、媚びずに誠意を尽くす礼節を持つことが、本当の「礼」の姿です。

● 「厳しさ」と「敵意」を混同しない

リーダーやマネージャーにとって、指導における「厳しさ」は必要ですが、**憎しみや嫌悪に基づいた行動は信頼を失います。**相手の成長を願う冷静で建設的な態度が求められます。

● 「礼」はパフォーマンスではない

あいさつや言葉遣いだけでなく、心から相手を尊重して接する姿勢が、部下や取引先との信頼関係を築く鍵です。


8. ビジネス用の心得タイトル

「厳しさに愛を、丁寧さに誠を──“内面の節度”が信頼を育てる」


この章句は、表面のふるまいではなく、内心の整え方こそが人間関係と信頼構築の核心であることを教えてくれます。

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