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正しくあるなら、人の非難に惑わされるな

礼を尽くして主君に仕えることは、君子として当然のふるまいである。

しかし、世間の目は時にゆがみ、誠実な行いですら「へつらい」や「おべっか」と受け取られることがある。

孔子はこうした中傷を受けながらも、「自分が正しいと信じることを、誇りを持って貫きたい」と語った。

大切なのは、他人の評価ではなく、自分の信念と誠実な行動である。

真心からの礼を軽んじる言葉には、心を動かされる必要はない。信じる道を静かに歩めばよい。

目次

原文

子貢欲去告朔之餼羊。
子曰、賜也、爾愛其羊、我愛其禮。

書き下し文

子貢(しこう)、告朔(こくさく)の餼羊(きよう)を去(のぞ)かんと欲(ほっ)す。
子(し)曰(いわ)く、賜(し)や、爾(なんじ)は其(そ)の羊を愛(お)しむ。我(われ)は其の礼(れい)を愛(お)しむ。

現代語訳(逐語・一文ずつ)

  • 「子貢、告朔の餼羊を去らんと欲す」
     → 子貢が、毎月初めの「告朔」の儀式で捧げる供え物の羊(餼羊)を廃止しようとした。
  • 「子曰く、賜や、爾は其の羊を愛しむ。我は其の礼を愛しむ」
     → 孔子は言った。「賜(子貢)よ、おまえはその羊を惜しんでいるのだろうが、私はその礼を大切にしたいのだ」

用語解説

用語解説
子貢(しこう)孔子の高弟で、商才と弁舌に長けた人物。実利的な考え方を持っていた。
告朔(こくさく)毎月1日に行う朝廷の儀式。君主が祖先にその月の政治方針を報告する宗教的・政治的行事。
餼羊(きよう)供え物として捧げられる生きた羊。形式・象徴としての重要性があった。
去る廃止する、取り除くの意。ここでは儀式から羊を除くこと。
爾(なんじ)あなた(子貢)を指す人称代名詞。
礼(れい)儀礼・形式・道徳的規範の象徴。孔子にとっては人間関係や秩序の根幹を成す。

全体の現代語訳(まとめ)

子貢が「毎月の告朔の儀式で用いる供え物の羊(餼羊)は費用がかかるので、やめよう」と提案した。
それに対して孔子は、「賜(子貢)よ、おまえは羊という“物”を惜しんでいるが、私はその“礼”を大切にしたいのだ」と答えた。

解釈と現代的意義

この章句は、**「形式(礼)を軽視しすぎると、本質的な意味も失われる」**という孔子の思想を示しています。

  • 子貢は合理主義的に「物が無駄だからやめよう」と考えた。
  • しかし孔子は、「礼という制度や文化が持つ象徴性・精神性」を重視した。
  • 単なる形骸ではなく、継承されるべき価値と心が“礼”には込められているという認識です。

ビジネスにおける解釈と適用

「効率と合理性の追求が“文化”を破壊する危険」

  • 形だけの儀式に見えても、それが文化や理念を伝える装置になっていることがある。
  • 毎朝の朝礼、始業前の挨拶、感謝メール、報告書の一言コメント──どれも形式に見えても“組織文化”の土台である。

「コスト削減=価値の削減ではないか?」

  • 子貢のように「無駄を省く」ことは大切だが、それによって象徴的価値や信頼の仕組みまで失われていないか、慎重に判断する必要がある。

「“儀式”を通じて信頼・理念・文化を守る」

  • 儀礼や慣例には、時間を超えて継承されるべき意味がある。
  • 孔子が言うように、「羊ではなく礼を大切にする」ことで、組織は秩序と信頼を維持する。

まとめ

「削るべきはコストではなく、形式に込めた“心”の意味を見極めよ」
〜合理主義に流されず、文化の価値を守る経営を〜

この章句は、「形式は意味を失えば無用だが、意味を伴えば“文化”となる」という重要なバランス感覚を私たちに教えてくれます。
現代の企業活動においても、効率だけでなく、継承すべき価値の本質を見極めるリーダーシップが求められています。

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