MENU

簿記の勘定科目:「法定福利費」の基礎知識

「法定福利費」とは、企業が法律に基づいて負担する社会保険料や労働保険料などの費用を指します。これは、従業員の福利厚生を目的とした支出であり、企業が義務として負担しなければならないものです。法定福利費は、損益計算書では「販売費及び一般管理費」に計上されることが一般的です。


法定福利費とは?

法定福利費には、以下のような費用が含まれます:

  1. 健康保険料(企業負担分)
    健康保険に加入する従業員のために企業が負担する保険料。
  2. 厚生年金保険料(企業負担分)
    厚生年金に加入する従業員のために企業が負担する年金保険料。
  3. 介護保険料(企業負担分)
    40歳以上の従業員が対象となる介護保険料。
  4. 雇用保険料(企業負担分)
    従業員の失業対策や教育訓練のために企業が負担する保険料。
  5. 労災保険料(全額企業負担)
    労働災害が発生した際に備えるために企業が全額負担する保険料。
  6. 児童手当拠出金
    児童手当を支給するための拠出金。

法定福利費の会計処理

  1. 法定福利費の計上
    法定福利費は、企業が従業員に支払う給与の一部に連動して発生します。費用として「法定福利費」勘定に計上し、未払金として処理することが一般的です。 例:従業員給与100万円に対する法定福利費が15万円の場合
   借方:法定福利費 150,000円  
   貸方:未払金 150,000円
  1. 法定福利費の支払い時
    実際に保険料を納付した際、未払金を減額します。 例:15万円を納付した場合
   借方:未払金 150,000円  
   貸方:普通預金 150,000円

法定福利費の税務上の取り扱い

  1. 損金算入
    法定福利費は法人税法上、損金(経費)として全額算入が認められます。
  2. 従業員負担分との区別
    法定福利費は企業が負担する分のみが対象となり、従業員の給与から控除される社会保険料は企業の負担には含まれません。

法定福利費の仕訳例

  1. 従業員給与支払い時の法定福利費計上
   借方:給料手当 1,000,000円  
   貸方:普通預金 800,000円  
   貸方:預り金(社会保険料) 200,000円

法定福利費が150,000円発生した場合:

   借方:法定福利費 150,000円  
   貸方:未払金 150,000円
  1. 法定福利費の支払い
   借方:未払金 150,000円  
   貸方:普通預金 150,000円

法定福利費の注意点

  1. 正確な計算
    法定福利費は給与額や保険料率に基づいて計算されるため、正確に計算することが重要です。特に、保険料率が年度ごとに変更される場合があるため、最新の情報を確認してください。
  2. 従業員負担分との混同を防ぐ
    給与から控除される従業員負担分と企業負担分を明確に区別し、適切に処理することが求められます。
  3. 未払金の管理
    納付期日を守らないと延滞金や罰則が発生する可能性があります。未払金を適切に管理し、期日内に納付することが重要です。
  4. 福利厚生費との区別
    法定福利費は、法律に基づく支出であり、社員旅行や食事補助などの福利厚生費とは区別して処理します。

法定福利費の管理方法

  1. 給与システムの活用
    給与計算ソフトを活用することで、法定福利費の自動計算や記録が正確に行えます。
  2. 未払金の定期確認
    社会保険料や労働保険料の未払金を月次で確認し、納付期日を守るようにします。
  3. 保険料率の更新確認
    毎年変更されることがある保険料率を確認し、計算ミスを防ぎます。
  4. 内部監査の実施
    法定福利費の処理が適切に行われているか、定期的に監査を行います。

まとめ

「法定福利費」は、企業が負担する社会保険料や労働保険料を記録する重要な勘定科目です。適切な会計処理と税務対応を行うことで、従業員の福利厚生を支援し、企業の法的義務を果たすことができます。給与システムや記帳方法を整備し、正確な計算と納付を行うことがポイントです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次