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■引用原文(日本語訳)
「知性、知識、不惑、忍耐、真実、制御、寂滅、苦楽、発生、消滅、恐怖、無畏、」
(『バガヴァッド・ギーター』第10章 第4節[一部])
※この節と次節(第5節)は連続しており、あらゆる人間的な性質や現象の「源」が神(クリシュナ)であることを列挙する詩節です。
■逐語訳(一語ずつ)
- buddhiḥ(知性)
- jñānam(知識)
- asaṃmohaḥ(不惑・混乱なきこと)
- kṣamā(忍耐)
- satyam(真実)
- damaḥ(制御:感覚の抑制)
- śamaḥ(寂滅:内なる平安、心の静寂)
- sukham duḥkham(喜びと苦しみ)
- bhavaḥ abhāvaḥ(発生と消滅)
- bhayam abhayaṃ(恐怖と無畏)
■用語解説
- 知性(buddhi):物事を論理的・合理的に判断する力。
- 知識(jñāna):真理に関する理解。経験や学習によって得る智慧。
- 不惑(asaṃmoha):迷いや錯覚に陥らない明晰な状態。
- 忍耐(kṣamā):困難に屈せず、怒りを抑えて耐える力。
- 真実(satyam):嘘や虚飾のない誠実さ、事実を語ること。
- 制御(dama):五感や欲望を制御する力。
- 寂滅(śama):心の平安、内面的な沈静。
- 苦楽(sukha-duḥkha):人生における喜びと苦しみの両面。
- 発生・消滅(bhava-abhāva):物事の生成と終焉、存在と非存在。
- 恐怖・無畏(bhaya-abhaya):不安と恐れ、そしてそれを乗り越える勇気。
■全体の現代語訳(まとめ)
「知性も知識も、迷いなき心も、忍耐も真実も、自己制御も心の平安も、そして人生の喜びと苦しみ、始まりと終わり、恐怖と恐れなき心――これらすべては、私(神)から生じたものである」
クリシュナは、人間のもつあらゆる力や感情の起源が、自分にあることを示している。
■解釈と現代的意義
この節は、人間のあらゆる「精神的資質」や「経験」が偶然にあるのではなく、すべて根源的な原理(神、宇宙意識)から発したものであるという宣言です。
私たちが人生で感じる喜びも苦しみも、そして成長に必要な知性や忍耐も、「与えられた資質」であり、「磨くべき賜物」であるという視点が得られます。
また、良いことも悪いことも、すべてが源(根本原理)に由来していると理解することで、人生に対する態度が「受容」から「感謝と修養」へと変わります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
自己理解と内省 | 自分の知性や忍耐が限界に感じられても、それらは「磨くために与えられた資質」であると理解し、冷静に自己改善に取り組める。 |
感情マネジメント | 恐怖や迷い、苦しみも否定せず、それらを観察し、成長の契機ととらえることで成熟した判断ができる。 |
リーダーシップ | 真実・制御・平静といった内的資質を養うことが、外部への影響力を強くし、周囲からの信頼を生む。 |
危機対応 | 恐怖に直面したとき、無畏の心を思い出し、冷静さと勇気を保つことで、周囲を導ける。 |
■心得まとめ
「あらゆる力も弱さも、与えられた資質と知れ」
自分の中にある知性も迷いも、苦しみも勇気も、すべては人生という道場で磨くべき素材である。
外部の状況に一喜一憂するのではなく、内面の資質と正しく向き合い、育てていくこと――それが成長と解放の鍵となる。
すべての力の源を意識することで、人は謙虚に、しかし力強く生きることができるのです。
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