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焼けるものを持たぬ者は、どこでも安らかに生きる


目次

🔖 原文(日本語訳)

「われらは何物をももっていない。いとも楽しく生きて行こう。
ミティラー市が焼けているときにも、(ここでは)何も焼けないのである。」
――『ダンマパダ』第5章「愉楽品」第44偈


📝 逐語訳と要点解説

  • 何物をももっていない(akiñcana):所有物、執着、固定観念を持たない心の状態。
  • 楽しく生きて行こう(sukhaṁ jīve):内なる自由と安定の中で生きる。
  • ミティラー市(Mithilā):古代インド神話における繁栄の象徴。王ジャーナカが治めたとされる都市。
  • (ここでは)何も焼けない(na me ḍayhati):執着がなければ、何も失われず、心も乱れないことの象徴。

🧩 用語解説

用語解説
無所有(akiñcana)物理的な所有だけでなく、心の執着・欲望・依存関係も持たないこと。
焼ける(ḍayhati)喪失、破壊、災難によって苦しむことの象徴。
ミティラー市外的環境や社会の象徴。「燃える」は変化・崩壊・災害の比喩。

🌐 全体の現代語訳(まとめ)

私たちは、何も持たない。
だから、誰よりも自由で、楽しく生きられる。

たとえ世界が炎に包まれようとも、
私たちは執着するものを持たないから、
焼けるものが、そもそも無いのだ。


💡 解釈と現代的意義

この偈は、現代の私たちに対し
「何を持つか」ではなく「何を持たないか」が
真の安楽につながるという洞察を与えてくれます。

  • 災害・不況・変化・老病死――外界は常に「燃えうる」ものに満ちている。
  • しかし、「持たない」「執着しない」「備えない」ことを選んだ者は、
    何が起ころうとも揺るがない自由と平安を得ている。
  • それは「捨てることで燃えなくなる」精神の法則です。

🏢 ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用例
ミニマル経営固定費・資産・拡大戦略に過度に執着せず、変化に強い軽やかな経営を目指す。
リスクマネジメント「これが無くなったら終わり」という体制を避け、柔軟性と非執着を持つ設計思想。
レジリエンスの哲学会社の評判、役職、売上などが一時的に損なわれても、心が揺るがぬ価値基準を持つ。
リーダーの姿勢部下、評価、業績に依存せず、自分自身の信念とミッションに基づく判断を重んじる。

✅ 心得まとめ

「持たぬ者は、何も失わない」

世の中が燃えていても、
執着がなければ、焼けるものは何もない。

だからこそ、本当に楽しく生きられるのは、
欲から離れ、執着を捨てた者だけ
である。


この偈は、前偈(第43偈)の「貪らないこと」の実践編ともいえる内容です。
さらに続く第45偈では「癡(無明)」に関わる智慧の喜びが述べられており、
三毒(貪・瞋・癡)を超える三部作として位置づけることも可能です。

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