目次
■引用原文(日本語訳)
「激情的で、行為の成果を求め、貪欲で、加害を性とし、清浄でなく、喜悦と悲しみに満ちた者は、激質的な行為者と言われる。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第27節)
■逐語訳
・激情に満ち(ラガヴァーン)、
・行為の結果(果報)に執着し(カルマ・パラ・プスティ)、
・貪欲で(ローヒナ)、
・**加害的(ヒムサートマカ)**で、
・清らかさを欠き(アシュッチ)、
・喜びと悲しみに揺れ動く(ハルシャ・ショーカ・ユクタ)――
このような人は、ラジャス(激質)に属する行為者と呼ばれる。
■用語解説
- 激情(ラガ):感情的な高ぶり。衝動に左右される性質。
- 果報の追求:成果・報酬・賞賛などを強く求める心理。
- 貪欲(ローヒナ):満足を知らない欲望。もっと欲しいという執着。
- 加害性(ヒムサ):自分の目的のために他者を犠牲にする傾向。
- 不清浄(アシュッチ):内面や動機の濁り。倫理や配慮の欠如。
- 喜悦と悲嘆(ハルシャ・ショーカ):結果によって感情が大きく振れ動く不安定な心。
■全体の現代語訳(まとめ)
感情に振り回され、成果にしがみつき、欲望に支配される人は、
たとえ努力していても、内面では調和を欠いており、
自己中心的な加害性や心の不安定さに染まっている。
そのような人は激質(ラジャス)に属する行為者とされ、魂の安定からは遠い状態にある。
■解釈と現代的意義
この節は、「外面的な行動の強さ」ではなく、「内面的なバランスの欠如」に焦点を当てています。
激しく働き、成功を追い求め、一見成果を上げているように見えても、
その動機と感情が乱れていれば、やがては自己と他者を傷つける結果になる――
それがラジャス的な行為者の危うさです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での例 |
---|---|
感情的マネジメント | 怒りや興奮で部下を動かすリーダーは、一時的に成果を出しても長期的に信頼を失う。 |
結果至上主義 | 結果だけを追い、プロセスや周囲への配慮を無視する働き方は、組織に疲弊と摩擦をもたらす。 |
倫理なき競争 | 欲望と成功欲に駆られて他者を踏み台にするスタイルは、長期的に見て破綻を招く。 |
感情変動 | 成功すれば有頂天、失敗すれば絶望――このような起伏は自己管理力の欠如であり、リーダーとしての弱さを表す。 |
■心得まとめ
「強さに見えるその姿、内は乱れていないか」
成果に執着し、感情に流され、欲望に駆られて行う行為は、
一見すると活力に満ちて見えるが、その実、心は不安定で、周囲を傷つける。
『ギーター』は、「行為の力強さ」ではなく、「心の純度」を見よと教える。
コメント