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執着に沈む者は、気づかぬうちに流される


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■引用原文(ダンマパダ 第二〇章「道」第287偈)

子どもや家畜のことに気を奪われて心がそれに執著している人を、死はさらって行く。
眠っている村を大洪水が押し流すように。


■逐語訳

  • 子どもや家畜――つまり家庭・所有・財産など――に心を奪われ、
  • それに執着している人間を、
  • 死(無常の力)は容赦なくさらっていく。
  • それはちょうど、眠っている村を突然の洪水が押し流してしまうようなものだ。

■用語解説

用語解説
子ども・家畜財産・家庭・生活基盤・感情的な対象すべてを象徴。現代でいえば、家族・仕事・持ち物・名誉など。
執着(アーサヴァ)手放せない愛着。仏教では苦しみの根本原因。
眠っている村無自覚・気づいていない心の状態。煩悩に気づかず安逸に暮らしている人々の象徴。
大洪水突然襲う死・災厄・無常のはたらき。準備がなければ一瞬で押し流される。

■全体の現代語訳(まとめ)

家庭や財産、愛する者たちに心を奪われ、それに執着している者は、その間に迫ってくる死という真理に気づくことができない。
その人はまるで、深夜に眠っている村人が、突如として押し寄せる洪水に流されるように、無常の力に無防備にさらわれていくのである。


■解釈と現代的意義

この偈は、「愛するもの・守るべきもの」に心が奪われすぎることで、かえって本質的な生の準備――死・無常・変化への覚悟――を忘れてしまうことの危うさを説いています。
愛情や責任感自体が問題なのではなく、それに心を奪われ「自分の精神的軸」まで明け渡してしまうことが、真の危険なのです。

この教えは、「人生の目的」「本当の備え」「何を最優先にすべきか」という深い問いを、私たちに投げかけています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点応用例
過度な所有への執着事業・部下・肩書・実績に対する過剰な執着は、変化に対応できない硬直性を生む。
危機管理の欠如安定している今に安心しすぎて、有事の備え(代替案・継承・リスクヘッジ)を怠ると、大きな変化に飲まれる。
エゴとコントロール欲「これは私のもの」「私が守らねば」という心が強すぎると、かえって状況を壊してしまう可能性がある。
柔軟で自律的な働き方執着による精神的依存を減らし、自らの判断で動ける柔軟性を育てることが、変化の激しい時代を生き抜く力になる。

■心得まとめ

「愛することと執着することは違う」
子どもや財産など、人生の大切なものに心を注ぐのは自然なこと。
だが、それに心を奪われすぎると、無常という“現実”に対して無防備になる。
本当に守るべきものは、「揺るがない心と、変化に向き合う覚悟」である。


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