― 気位や才能よりも、大切なのはまごころ
孔子は、人の性質と徳の関係について、厳しい言葉で断じた。
気位だけが高く、正直さに欠ける者、
無知でありながら、まじめさや努力の姿勢を持たない者、
能力がなくてもよいのに、誠実さすらない者――
こうした人々には、どう導いていいかわからないと、孔子は手を上げた。
ここで重要なのは、知識や才能の有無ではない。
たとえ未熟であっても、正直・まじめ・誠実な心さえあれば、
人は成長し、導くことができる。
逆に、内面の誠がなければ、人は変われない。
孔子の言葉は、人格の根本が「信(まこと)」にあることを強く示している。
原文と読み下し
子(し)曰(のたま)わく、狂(きょう)にして直(なお)からず、侗(どう)にして愿(げん)ならず、悾悾(こうこう)として信(しん)ならずんば、吾(われ)之(これ)を知らざるなり。
注釈
- 狂(きょう):気位だけが高く、分別に欠ける人。思慮浅く、自信過剰な人物を指す。
- 直(なお)し:率直さ、正直さ。内面の真っ直ぐさ。
- 侗(どう):無知、物事を知らない人。
- 愿(げん):慎み深く、誠実に努力する姿勢。内省と真摯さ。
- 悾悾(こうこう):ぼんやりしていて頼りない様子。能力の乏しさ。
- 信(しん):誠実、まごころ。他人との関係において最も重視される徳。
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