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至誠は天地とともに化す」――誠の極みに至る者、宇宙の働きを助く。


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■引用原文(朱子章句第二十一~二十三章)

自誠明 謂之性、自明誠 謂之教、誠則明矣、明則誠矣。
唯天下至誠、為能尽其性、能尽其性、則能尽人之性、能尽人之性、則能尽物之性、能尽物之性、則可以賛天地之化育、可以賛天地之化育、則可以与天地参矣。
其次 致曲、曲能有誠、誠則形、形則著、著則明、明則動、動則変、変則化、唯天下至誠為能化。


■逐語訳

  1. 誠から自然に明(あき)らかさが生じるのを性といい、明から誠に至るのを教という。
  2. 誠があれば明もあり、明があれば誠もある。
  3. この世で最も完全な「至誠」を備えた者こそ、自分の本性を完全に尽くすことができる。
  4. 自分の性を尽くすことができる者は、他人の性も尽くさせることができ、さらに物の性も尽くさせることができる。
  5. 物の性を尽くさせることができれば、天地の造化・育成を助けることができる。
  6. それができる者は、天地と並び立つ存在となる。
  7. それに次ぐ人物は、細やかなことを誠実に行い、それが外に形となって現れ、
  8. 明らかに輝き、他人を感動させ、変化を促し、やがて世の中を一変させる。
  9. ただ至誠を備えた者だけが、こうした「化(か)」す力を持つ。

■用語解説

用語解説
誠(せい)自己の本性を偽らず完全に発揮すること。天道そのもの。
性(せい)天から与えられた本質・本性。第一章にも「天命之謂性」とある。
教(きょう)道を学び身につけて誠に至ること。後天的に誠を目指す道。
至誠(しせい)誠の極み。聖人の域。人間が到達できる理想的徳の完成形。
化育(かいく)自然の中で天地が万物を生成し、育てる働き。
参(さん)天地と対等に「三つ並び立つ」こと。『荀子』由来の思想。
致曲(ちきょく)こまごました事柄を丁寧に誠実に実行すること。
形・著・明・動・変・化誠が発動し外部に波及するプロセスの比喩的展開。

■全体の現代語訳(まとめ)

誠がその人の本性から自然に現れ、それが明らかになると「性(本性)」と呼ばれる。反対に、誠を求めて学び明らかさに至ることは「教(教育)」と呼ばれる。つまり、誠と明とは表裏一体であり、互いに促し合うものである。

この誠の極みに達した者は、自分の性を完全に発揮することができる。そのような者は他人の本性も導くことができ、さらに物の本性までも正しく働かせる。物の本性を尽くせる者は、天地の生み育てる働きを助けることができ、それゆえ天地と並び立つ存在となる。

一方、それに次ぐ者は、こまごまとしたことでも誠実に取り組むことによって、誠がかたちを表し、それが明確となり、輝き、他者を感動させ、変化を起こし、やがて世の中全体を「化」するに至る。

そして、このような深い変化を起こす「化」の力を持つのは、やはりただ至誠の人のみである。


■解釈と現代的意義

この章では、「誠」が道徳の根本であり、宇宙的秩序(天道)に通じる原理であることが、壮大なスケールで語られます。

  • 「至誠」は自己の完成を超えて、他者・物・社会・自然全体に好影響を与える。
  • 個人の道徳的努力が、自然界の秩序や社会の大変革へとつながる、というのは東洋思想独自のスピリチュアルなヴィジョン。
  • また「次善の道」として、こまごまとした実践からでも誠が育ち、最終的には変化(化)を起こせるという教えは、あらゆる人に希望を与えるものです。

■ビジネスにおける解釈と応用

観点応用ポイント
経営理念とリーダーシップ誠の極みに近づくリーダーは、従業員・取引先・社会・自然すべてに好影響を与える存在となる。
企業文化と変革小さな行動・誠実な言動が組織文化を変化させ、最終的に社会全体を動かす「化」に至る。
人材育成「博学・審問・慎思・明弁・篤行」の積み重ねが、至誠へと至る土台を作る(前章との連続)。
SDGsや社会貢献「尽人之性・尽物之性」は、現代でいえば人間の尊厳持続可能な開発の思想と重なる。

■心得まとめ

「誠はすべてを変える」

自分の本性に忠実に、誠実に生きること。
それはやがて他人を動かし、物を活かし、
天地の働きを助け、
世界を変えていく。

誠を尽くす人間は、
**天地とともに創造する者(創造主)**と
なりうるのだ。

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