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■引用原文
誠者自成也、而道自道也。誠者物之終始、不誠無物。是故君子誠之為貴。
誠者非自成己而已也、所以成物也。成己仁也、成物知也、性之徳也、合外内之道也、故時措之宜也。
故至誠無息。不息則久、久則徴、徴則悠遠、悠遠則博厚、博厚則高明。
博厚所以載物也、高明所以覆物也、悠久所以成物也。
博厚配地、高明配天、悠久無疆。如此者、不見而章、不動而変、無為而成。
■逐語訳
- 誠ある者は、自らを完成させる存在である。
- また、道はそれ自身で導きを与えるものである。
- 誠とは万物の始まりと終わりに関わるものであり、誠がなければ何物も存在しない。
- それゆえ、君子は「誠をもつこと」を何よりも大切にする。
- 誠ある者は、ただ自己を完成させるのみならず、他をも完成させる。
- 自己を完成することは「仁」であり、他を完成することは「知」である。
- これは人間の本性に備わる徳であり、内面と外面を調和させるものである。
- したがって、どんな時にも適切に応用することができる。
- 至誠の働きはとどまることなく、
- とどまらなければ持続し、持続すれば徴（しるし）が現れ、
- しるしが現れれば、それは遥かなる働きとなり、
- 遥かなる働きは、広く深くなり、
- 広く深くなれば、さらに高く明るくなる。
- 博厚（広く深いこと）は、万物を支えることであり、
- 高明（高く明るいこと）は、万物を覆うことであり、
- 悠久（はるかで永遠であること）は、万物を成就させる。
- 博厚は「地」に、高明は「天」に、悠久は「無限」に比すべきである。
- このような誠の人は、あえて見せようとしなくても明らかであり、
- 動かそうとしなくても変化を生じ、
- 作為せずとも物事が成しとげられる。
■用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 自成 | 自らを完成すること。内的な自己完成。 |
| 道自道也 | 道は自然に導く力を持つこと。天命に従って進むこと。 |
| 終始 | 始まりから終わりまでのすべて。 |
| 仁・知 | 自己を完成する徳が「仁」、他を完成する働きが「知」。いずれも本性（性）に根ざす徳。 |
| 合外内之道 | 内面（誠）と外面（行動）とを一致させる道。 |
| 時措之宜 | あらゆる時に応じて適切に処すことができる力。 |
| 徴 | 効果や現象として現れるしるし。 |
| 博厚 | 広く深いこと。大地の徳。 |
| 高明 | 高く明るいこと。天空の徳。 |
| 悠久 | 永遠であること。無限に広がる働き。 |
| 無為而成 | ことさらに作為せずとも自然に成就すること。 |
■全体の現代語訳（まとめ）
誠を備えた人物は、自ら自己を完成し、その誠実な在り方そのものが自然と他を導き・成し遂げる力となる。道に従えば、誠は自然と実現へと進み、物事の始まりから終わりまですべてに通じる原理となる。よって、君子にとっては「誠であること」こそが最も重要な徳である。
この誠は、単に自己を磨くだけでなく、外部にも影響を及ぼし、他人・社会・自然にまで広がる。これは、自己完成の仁と他者完成の知という二大徳に通じ、内と外の調和をもたらす。
そして、誠は止まらず・続き・現れ・広がり・明るく照らし・世界を変えていく。
その働きは、大地のように支え、天のように覆い、無限に成しとげていく。
最も高い誠の境地は、あえて何かをする必要もなく、自然と存在感を放ち、変化を起こし、物事を完成させる力を持っているのだ。
■解釈と現代的意義
この章では、「誠」の持つスケールの大きさと、静かで持続的な影響力が描かれています。ポイントは以下のとおりです：
- 誠は自己修養にとどまらず、社会的作用を持つ力
- 誠の持続が、信頼・信用という「徴」を生む
- 誠の本質は自然（天・地）の働きと同調するもの
これは、個人の徳が組織・社会・宇宙に影響を及ぼすという思想でもあり、西洋の「インテグリティ（integrity）」の概念とも近い。
■ビジネスにおける解釈と応用
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 自己形成（セルフマネジメント） | 誠をもって自己を律することが、長期的な信用・信頼につながる。 |
| 組織文化 | 誠実な文化が息むことなく続くことで、企業は長く社会に貢献できる。 |
| 経営哲学 | 誠によって道が自然と導かれるように、トップの誠実さが企業の方向性を定める。 |
| 持続可能性 | 誠の「悠久・博厚・高明」の働きは、まさにサステナビリティ経営の根幹に通じる。 |
| 無為而成のマネジメント | 作為的にマイクロマネジメントするのでなく、誠をもって場を整えることで自然と成果が出る。 |
■心得まとめ
「誠は、見せびらかすことなく成しとげる」
誠とは、自らを成し、他を成し、
天に照らされ、地に支えられ、
時に応じ、止まることなく、
ついには作為なくして成しとげる。
誠を備える者は、静かにして力強く、
無為にして変化をもたらす――天地と並び立つ存在である。
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