まごころと他者への思いやり、それが孔子の道のすべて
孔子は弟子の曾子に、自分の道(教え)は一本の糸のように、ただ一つのことで貫かれていると語った。
その言葉を受けた曾子は、先生の教えは「忠恕」――すなわち、まごころ(忠)とおもいやり(恕)――であると理解した。
忠とは、自分の内に誠を尽くすこと。
恕とは、自分にしてほしいように他人にもすること。
この二つは対になるものであり、内に誠をもって真剣に生き、外に柔らかく人を思いやることが、孔子の教えの根幹だった。
知識や形式よりも先に、人としてどうあるか――
孔子の道は、驚くほどシンプルで、しかし深く温かい「人間の道」である。
原文とふりがな付き引用
子(し)曰(いわ)く、参(しん)よ、吾(われ)が道(みち)は一(いつ)を以(もっ)て之(これ)を貫(つらぬ)く。
曾子(そうし)曰(いわ)く、唯(い)。
子、出(い)づ。門人(もんじん)、問(と)うて曰く、何(なん)の謂(い)いぞや。
曾子曰く、夫子(ふうし)の道は忠恕(ちゅうじょ)のみ。
孔子の道とは、ただまっすぐなまごころと、あたたかなおもいやりであった。
それだけで人は、深く正しく生きられる。
注釈
- 一を以て貫く…すべての教えが一本の中心的原則(ここでは忠恕)に集約されていること。
- 忠(ちゅう)…誠実さ。自分の内面に対して真心を尽くすこと。
- 恕(じょ)…他者への思いやり。「己の欲せざる所は人に施すなかれ」に通じる、儒教倫理の中心概念。
- 唯(い)…「はい」「わかりました」という承諾の言葉。曾子の素直で信頼に満ちた応答を表す。
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