目次
📜引用原文(日本語訳)
三*
一切の業をすて去り、以前に造った塵を振い落し、「わがもの」という観念がなく、つねに自己が安住している修行僧には、人にむかってしゃべる必要がない。
― 『ダンマパダ』 第二章 第三偈
🔍逐語訳(文ごとに意訳)
- 一切の業をすて去り:すべての行為(業)への執着を捨て去り、カルマの輪廻から解放され、
- 以前に造った塵を振い落し:過去に積んだ行為(悪業・煩悩)を完全に清め、
- 「わがもの」という観念がなく:「これは私のもの」「私がやった」という執着心・所有欲が消えて、
- つねに自己が安住している修行僧には:真の自己(涅槃の境地)に常に安らいでいる修行完成者にとっては、
- 人にむかってしゃべる必要がない:自己顕示や説得は不要であり、存在そのものが語っているからである。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
業(カルマ) | 行為によって生じる因果の法則。意志的な行動は未来の結果(果報)を生む。 |
塵(じん) | 煩悩・無明・過去の悪業などを象徴する表現。 |
「わがもの」という観念 | 自我意識・所有欲・執着心。「私」という思いに根差す一切の錯覚。 |
安住(あんじゅう) | 心が動揺せず、あるがままに安らいでいる状態。涅槃的静寂を指す。 |
しゃべる必要がない | 内面が完成されている者には、言葉による主張や説得が不要であるという意。沈黙そのものが真理を語る。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
すべての執着を手放し、過去の煩悩や因果を清め、もはや「自分のもの」と思う気持ちすら持たず、真理の中に安らいでいる修行者には、他人に向けて語る必要はない。その存在そのものが、完成された証だからである。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「沈黙の力と、完成された存在感」を説いています。
人はしばしば「説明」や「自己主張」を通じて自分の価値を示そうとしますが、本当に完成された人物は、その態度・所作・在り方そのものが周囲に語りかけます。
**「語らずして伝わる」**とは、人格が極まり、外的な言葉に頼らずとも信頼や尊敬を集める状態です。
現代の情報過多・発信過多の時代において、「沈黙」と「自己主張の放棄」がどれほど力を持つかを再認識させてくれる一節です。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実践への応用例 |
---|---|
言葉より行動 | 多くを語らずとも、誠実な行動・姿勢・一貫性が、信頼をつくる最大の要素。 |
リーダーの沈黙 | 真に成熟したリーダーは、声高な指示よりも「在り方」で組織を導く。 |
執着のない成果主義 | 「自分がやった」「これは私の功績」と語る必要のない人ほど、本質的な成果を生む。 |
脱・自己宣伝 | 自分をアピールするよりも、「実があればこそ香る」姿勢のほうが、長期的な評価につながる。 |
✅心得まとめ
「語らずして悟らせる――沈黙が最も雄弁なときがある」
成熟とは、語らずとも滲み出る静けさと気高さである。
すべての執着を超えた人には、言葉すら不要となる。
それは、何を言ったかではなく、どう在ったか――その生き様が真理を示すからである。
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