目次
■引用原文(『ダンマパダ』第二一章 第三〇三偈)
信仰あり、徳行そなわり、名声と繁栄を受けている人は、いかなる地方におもむこうとも、そこで尊ばれる。
――『ダンマパダ』 第二一章 第三〇三偈
■逐語訳(一文ずつ訳す)
- 「信仰あり、徳行そなわり」
――真理を信じ、それを行動で体現している人物であり、 - 「名声と繁栄を受けている人は」
――人々の敬意と豊かな成果をすでに得ている人は、 - 「いかなる地方におもむこうとも」
――どんな土地、文化、環境に赴こうとも、 - 「そこで尊ばれる」
――その人徳と行いによって、広く敬われ、歓迎される。
■用語解説
- 信仰(サッダー):
仏法や真理に対する信頼、誠実な心、根拠ある確信。盲信ではなく、智慧と実践に基づいた深い信心。 - 徳行(シーラ):
戒めを守り、善き行動を重ねること。言行一致の生き方、他者への誠実さ。 - 名声(ヤーソ)と繁栄(サンパッダー):
外面的な評価や成功であるが、ここでは内面の徳に根差した自然な結果として描かれている。 - 尊ばれる:
単に有名になるのではなく、「敬意をもって受け入れられる」という意味。人格的な信頼を得た状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
真理を信じて正しく生き、誠実な行いを積み重ねてきた人は、名声や成功を得る。そしてそのような人は、どんな場所に行っても、たとえ文化や習慣が違っていても、自然と敬意をもって迎えられる。
人格と実践に裏打ちされた評価は、時空を超えるというメッセージが込められている。
■解釈と現代的意義
この偈は、現代人にとっても極めて重要な示唆を与えます。
- 人脈
- 地位
- 経歴
といった「肩書き」による評価は、場が変われば通用しないこともあります。
しかし、「信頼される人格」「誠実な生き方」は、どこへ行っても通用します。むしろ、それこそが普遍的な価値なのです。
つまり――
**「何を持っているか」ではなく、「どう在るか」**が、その人の価値を決めるのだと、仏陀は説いています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーシップ | 部下や取引先が異なっても、誠実・公平・謙虚なリーダーは常に尊敬される。 |
異動・転職・出張先での姿勢 | 新しい環境でも、信頼される人は「何をしてきたか」よりも「どうふるまうか」で評価される。 |
ブランドづくり | 商品のスペック以上に、長年誠実に築いてきた企業文化や顧客対応の姿勢が、信頼を生むブランド力となる。 |
国際的な仕事への応用 | 異文化環境でも、普遍的な価値(誠実、敬意、責任感)を実践できる人は自然と尊敬され、成果も出やすくなる。 |
■心得まとめ
「肩書きは変わっても、徳は光り続ける」
人の価値は、
環境によって左右されるものではない。
誠実さ、正しさ、信頼――
それらは、どこにいても人の心を動かす。
仏は言う。
「信と徳のある者は、世界のどこにいても、尊ばれる」
それこそが、人生における本物の財産である。
コメント