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■引用原文(『ダンマパダ』第十三章 第172偈)
また以前には怠りなまけていた人でも、のちに怠りなまけることが無いなら、その人はこの世の中を照らす。あたかも雲を離れた月のように。
― 『ダンマパダ』第172偈(中村元訳)
■逐語訳(逐文的な意味の解釈)
- 以前には怠りなまけていた人でも:過去に精進せず、怠惰に過ごしていた者であっても、
- のちに怠りなまけることが無いなら:後に真剣に努力し、怠惰を捨てたならば、
- その人はこの世の中を照らす:その人の生き方は、周囲に光を与える存在となる。
- あたかも雲を離れた月のように:ちょうど、雲の陰りを抜けた月が明るく夜空を照らすように。
■用語解説
- 怠りなまける:精進を欠き、努力を怠ること。仏教における五蓋の一つ「惛沈睡眠(こんちんすいめん)」とも関係。
- 照らす:自らが光となって、他者や社会に影響を与える存在になること。
- 雲を離れた月:一時は隠れていたが、再び輝きを取り戻した清らかな存在の象徴。
- 世の中:現世、または社会全体。自分の生きる環境。
■全体の現代語訳(まとめ)
「たとえ過去に怠け、道から外れていた人であっても、後に努力して怠けることがなくなれば、その人は世の中に光をもたらす存在となる。それはまるで、雲から抜け出して明るく輝く満月のようである。」
――これは、過去にとらわれず、今この瞬間の行いで人は再生し、他者をも照らす存在になれるという仏陀の励ましである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「過去の過ちや怠惰に囚われるな。いま変わればよい」という強く温かい教えです。
私たちはしばしば、「過去に失敗した」「怠けた」「不真面目だった」と自己否定しがちです。
しかし仏陀は、「いま目覚め、真剣に生きれば、あなた自身が光になれる」と励ましてくれます。
これは、人生を立て直すすべての人にとって、再出発の力となるメッセージです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
自己再生のチャンス | 過去の職場態度や業績が悪くても、姿勢を改めれば信頼と実績は取り戻せる。 |
人材育成 | 部下や後輩の過去を責めるより、現在の姿勢に注目して支援することで、真の成長を引き出せる。 |
キャリア転換 | 一度の失敗やブランクがあっても、新しい場で真摯に取り組めば、その人自身が光になる。 |
変化の評価 | 昨日までと違う今日を生きている人を、過去ではなく現在で判断しようとするリーダーの姿勢が組織を変える。 |
■心得まとめ
「過去に雲がかかっていても、月はまた輝ける」
この偈は、過去を悔いる人すべてへの光です。
過去がどれほど怠けたものであっても、いま目覚めて努力を始めれば、その人は周囲を明るく照らす存在になれる――
まるで雲を抜けて輝く月のように。
あなたの変化は、周囲に希望を与える灯火となるのです。
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