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師と友をよく選んで仁を磨け —— よき人間関係が、自分をつくる

子貢が「仁を実践するにはどうすればよいか」と問うたとき、
孔子は、職人にたとえてその道を説いた。

「よい仕事をしたいと思うなら、まず道具を研ぎ澄ますことから始める。
それと同じように、自らを磨きたいと思うなら、まずよき人に学び、よき人と交わることだ」と。

どの土地にあっても、賢い主君に仕え、仁徳ある友人を持つこと。
師と友の選び方が、そのまま己の人格と生き方を決定づけるのである。

この心得は、「誰とつながるか」が「どう生きるか」に直結することを示します。
人間関係は自己修養の場であり、最良の学びの環境です。

目次

原文

子貢問為仁。子曰、工欲善其事、必先利其器。居是邦也、事其大夫之賢者、友其士之仁者也。

書き下し文

子貢(しこう)、仁(じん)を為(な)さんことを問(と)う。子(し)曰(いわ)く、工(たくみ)、其(そ)の事(こと)を善(よ)くせんと欲(ほっ)すれば、必(かなら)ず先(ま)ず其の器(うつわ)を利(と)くにす。是(こ)の邦(くに)に居(お)るや、其の大夫(たいふ)の賢(けん)なる者に事(つか)え、其の士(し)の仁(じん)なる者を友(とも)とす。

現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 「子貢、仁を為さんことを問う」
     → 子貢が孔子に「仁(人としての徳)を実現するにはどうすればよいですか」と尋ねた。
  • 「子曰く、工、その事を善くせんと欲すれば、必ず先ずその器を利にす」
     → 孔子は答えた。「職人が仕事を上手に行おうと思えば、まず道具をしっかり整える必要があるように──」
  • 「この国に住むならば、その大夫の賢なる者に仕え、士の仁なる者を友とせよ」
     → 「同じように、その国に住むのであれば、優れた指導者に仕え、仁徳ある人を友としなさい」。

用語解説

  • 子貢(しこう):孔子の高弟。弁舌に優れ、経済にも明るく、外交面でも活躍した人物。
  • 仁(じん):孔子の思想の中心概念。思いやり、誠実さ、道徳的な徳性の総体。
  • 工(たくみ):職人。ここでは、仕事をする人の例え。
  • 器(うつわ):道具、手段。転じて「人間としての力・準備」の象徴。
  • 大夫(たいふ):諸侯に仕える高官や上級役人。
  • 賢者(けんじゃ):徳・才ともに優れた人物。
  • 士(し):学問や倫理に励む身分の者。広義には知識人や修養者。
  • 友とす:友人として付き合う。価値観や人格を学ぶ対象として選ぶこと。

全体の現代語訳(まとめ)

子貢が「仁を実践するにはどうすればよいか」と尋ねた。
孔子は次のように答えた:

「職人が仕事を上手にするには、まずその道具を研ぎ澄ます必要がある。
それと同じように、徳を高めたいと思うなら、住んでいる国で賢い上司に仕え、仁徳ある人物を友とすることだ。
そうすることで、自らも仁を実践できるようになる」。

解釈と現代的意義

この章句は、「仁(人徳)を成すには、環境と準備が大切である」という実践的かつ戦略的な倫理観を示しています。

  • 単に「良いことをしよう」と思うだけではなく、そのために「自分を磨く」「正しい人と関わる」ことが不可欠。
  • 「職人が道具を整える」という比喩は、自己修養・スキルアップ・人的環境の整備を表している。
  • 孔子の教えは理想主義だけでなく、現実に根ざした行動指針でもあることがよくわかります。

ビジネスにおける解釈と適用

◆ 「志を実現するには、まず準備せよ」

仕事で成果を出したければ、知識・スキル・ツールを整えることが先決。「志あれど準備なし」では、成果は出せない。

◆ 「誰と働くか、誰と学ぶかが“仁”の基盤」

信頼できる上司に仕え、尊敬できる仲間と交流することが、人格的な成長につながる。職場は“徳を育てる環境”でもある

◆ 「道具=スキル/人脈=器」

現代で言えば、道具とはITスキルや業務知識、人間関係の構築力。これらを整備することが、成功への準備となる。

◆ 「成長は、選択から始まる」

どの職場に身を置き、どの人から学び、どの人と時間を共にするか──この選択が、結果的に「どんな人間になるか」を決める。

まとめ

「仁を成すは環境と準備から──“磨く”と“選ぶ”が人を育てる」

この章句は、「志を形にするには、自分を整え、人を選べ」という極めて実践的な倫理を伝えています。
人材育成、メンター制度、キャリア形成指導など、多方面で応用可能な指針です。

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