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尊敬に酔うな、名声の影に危機がある


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■原文(一六)

(修行僧に対してなされる世の人々の)尊敬のうちには、
このわざわいと大きな危険のあることを知って、
修行僧は、人々に知られること少なく、
無欲で、気をつけて、遍歴せよ。


■逐語訳

  • 尊敬のうちにはわざわいと危険がある:人々の称賛や敬意の裏には、修行の堕落や心の乱れが潜んでいる。
  • 人々に知られること少なく:名を売らず、目立たず、静かに生きること。
  • 無欲で:世間的な名声・財・名誉などに心を動かされず。
  • 気をつけて:常に警戒し、内省し、慎重であること。
  • 遍歴せよ:一つの場所にとどまらず、執着なく移動し、流れるように生きる。仏教では遊行の姿勢。

■用語解説

  • わざわい(災い):名声が心の慢心・執着・堕落を生むこと。
  • 大きな危険:信仰心の形骸化や、外見だけを保って内面の修行が崩れること。
  • 遍歴(へんれき):特定の地位や安定に留まらず、柔軟に修行を続ける態度。比丘の伝統的生き方。

■全体の現代語訳(まとめ)

世間からの尊敬の中には、実は大きな災いと危険が潜んでいると理解せよ。
だからこそ修行僧は、有名になることを避け、欲を持たず、警戒心を持ち、執着せずに遍歴しながら生きよ。
真の修行とは、評価されることではなく、心を守り抜くことである。


■解釈と現代的意義

この句は、「賞賛=善」ではないという冷静な観察を説いています。
人々に認められ始めると、人は無意識のうちに**「称賛される自分」**を演じてしまい、本来の目的(修行・使命・誠実さ)を見失っていきます。
これは、現代のリーダー・有名人・インフルエンサー・社会的成功者にも非常に共通する落とし穴です。

仏教は、あくまで「無名の中の清らかさ」に価値を置きます。
**名声や称賛は、心を汚す微細な毒にもなり得る。**それを知ったうえで、静かに生きることが、智慧ある人の姿なのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用
出世・昇進評価されるほど、自己演出や慢心が芽生えるリスクがある。常に原点と内省を忘れないこと。
ブランド・知名度注目を浴びることは商機にもなるが、その中に「信用喪失」や「反発」の種も潜む。
リーダーシップ褒められることに依存せず、誰も見ていなくても誠実であれる人こそ、真に信頼される。
組織運営名声を追う文化ではなく、「地味でも真摯」「目立たなくても本質的」な行動を評価する仕組みが重要。

■心得まとめ

「称賛の裏には慢心の種がある。静かに歩む者に、真の力は宿る」

人に知られることが増えれば増えるほど、心の軸が揺れやすくなる。
だからこそ、無欲で慎重に、自らを律しながら歩むことが、本当の強さである。
ビジネスやリーダーの世界においても、目立たずとも誠実な者、称賛を求めず結果で示す者が、本物である。


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