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能率主義の影

能率主義の光と影

能率は企業の業績を向上させる強力な手段であり、その価値について疑う余地はありません。戦後、アメリカから紹介された能率技法を導入することで、日本企業は一定の成果を挙げてきました。しかし、この成功がかえって「能率至上主義」という偏った考えを生み、能率の限界を見落とす原因となりました。

能率第一主義の誤解

「能率を向上させさえすれば会社の業績は向上する」という単純な発想が、広く浸透してしまったのは大きな問題です。行政指導の影響もあり、多くの企業経営者がこの考えに囚われました。能率向上そのものは否定されるべきではありませんが、その効果や限界を正しく理解しないままの推進は、企業を危機に陥れる可能性があります。


能率向上の限界と他条件の変化

能率向上が利益拡大につながるのは、他の条件がほとんど変化しない場合に限られます。売価の下落や賃金の上昇、経費の増大などが起これば、能率向上の効果が相殺されるどころか、逆に企業の収益を圧迫する結果を招くのです。この単純な理屈を無視し、能率だけに頼る経営は、時代遅れになりつつあります。


能率病がもたらす危機

企業経営とは、あらゆる資源と活動を統合した結果として利益や損失が生じるものであり、能率はその一部に過ぎません。これを理解せずに能率のみを重視することは「能率病」とも呼べる状況を生み、企業を破綻へと導くリスクを高めます。S社も、能率向上を続けながら業績が悪化し、ついには倒産の危機に瀕することになりました。


売価の下落と賃金の増加

企業間競争が激化する中、多量生産品の売価は時間とともに下落します。この圧力は、親企業からの値下げ要求として下流企業に押し寄せ、付加価値の減少をもたらします。一方で、賃金の上昇やインフレが経費の増大を引き起こし、企業の利益をさらに圧迫します。これらの要因を能率向上だけで補うことは、もはや不可能な状況になっているのです。


データ分析による状況の理解

S社では、製品分析を通じて付加価値と賃率の具体的なデータを明らかにしました。これにより、能率向上だけでは業績悪化を防げないという現実を、社長に納得してもらうことができました。この理解が、経営方針の大転換につながる第一歩となったのです。


再生への道

倒産の危機に瀕していたS社は、その後驚くべき高収益を実現する企業へと生まれ変わりました。変革の成功は決して奇跡的な出来事ではなく、平凡な真理を着実に実行に移した結果に過ぎません。この事実こそが、私たちに勇気と希望を与えてくれるものです。

次章では、S社がどのようにしてこの変革を成し遂げたのかを、具体的に解説します。

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