目次
■引用原文(日本語訳)
意図(願望)から生じた一切の欲望を残らず捨て、
意により感官の群をすべて制御し、
―『バガヴァッド・ギーター』第6章 第24節
■逐語訳(一文ずつ)
- 意図(願望)に基づく、あらゆる欲望をことごとく放棄し、
- 意志(心の働き)によって、すべての感官(五感と心)を制御しなさい。
■用語解説
- 意図(願望、サンカルパ):何かを得よう、なろうとする心の動き。将来への執着・期待も含む。
- 一切の欲望(カーマ):感覚的な快楽・所有・地位・評価などを求める心の動き。
- 捨てる(ティヤージャ):否定や抑圧ではなく、執着を手放すこと。
- 意(マナス):知性や感情を司る内的器官。
- 感官の群(インドリヤ):視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚に加え、心の働きも含む。
■全体の現代語訳(まとめ)
すべての欲望は、心の意図(こうなりたい・これを得たい)から生じる。
それらを根こそぎ手放し、意志の力によって、五感と心の動きを制御しなさい。
■解釈と現代的意義
この節は、「欲望を捨てる」とは単に物欲を否定することではなく、
“何かになろう、何かを得よう”という根本的な願望の放棄を意味します。
つまり、「自己のあるがままに満足する境地」に向かうためには、
意志(心の働き)によって自分の内側をコントロールすることが求められているのです。
これは、現代においても「過剰な自己期待」や「外部への依存」から自分を解放するための指針です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と適用例 |
---|---|
欲望と執着の制御 | 「売上を伸ばしたい」「上司に評価されたい」といった願望に囚われると、無理や焦りが生まれる。執着を手放すと冷静な判断が可能になる。 |
意志による自律 | 外部の刺激(SNS、競合、顧客の声など)に振り回されず、意志を持って自己の行動や判断をコントロールする力が重要。 |
感情労働と心の安定 | 他人の反応や結果に左右されるのではなく、内的安定を持った判断ができるリーダーシップが求められる。 |
持続可能な仕事観 | 過剰な欲望に基づく働き方はバーンアウトを招く。自分を律しつつ、穏やかな成果を積み重ねる姿勢が、長期的に信頼される働き方。 |
■心得まとめ
「“こうなりたい”を捨てた時、あなたは本当のあなたになれる」
欲望は本能であるが、振り回されれば苦しみを生む。
その根を断ち、心の働きで自分の感覚や思考を律することで、
初めて「自由な自己」に近づける。
ビジネスにおいても、自分の意思で舵を取り、願望や他人の評価に振り回されない姿勢が、
本物のプロフェッショナルを育てる。
コメント